日本でも、一週間に数日、数時間ずつしか営業しないラーメン屋や料亭など、店主の極度のこだわりが感じられる名店というのは存在する。たいていそうした店は、訪れるのが困難な分、大きな充実感が得られるものだ。しかし、ここアメリカ南部には、一週間で週末だけ、6時間ずつしか営業しない水族館が存在した。
それがこのSea World San Antonioだ。テキサス州が誇る内陸部の観光都市、サンアントニオに位置するこの水族館、ホームページを見ても、11月は第四週、12月は第三週と第四週を除いて、週末の、しかも午後の6時間ずつしか営業していない。水をテーマとするアミューズメントパークであるから、冬はオフシーズンであることは想像がつくものの、それにしてもやる気が感じられない短い営業時間に興味をそそられ、訪問してみることにした。
開園時間の12時ちょうどに中に入ると、パーク内の異様な雰囲気に気づく。パーク全体の約半分の面積を占めるウォーターパーク部分(日本で言えば、ウォータースライダー等を備えた大型プール施設)が閉まっているのは、オフシーズンであるから仕方ないとしても、残り半分の水族館及び遊園地部分でも、ショップを中心に、3割くらいの施設が閉まっている。
ただ、もう少し良く観察してみるとそれも頷けるのが、このSea World、ほとんどのアトラクションやショーが「水に濡れる」ことを売り物に作られており、例えばこの「Journey to Atlantis」というアトラクションは、最上部から水の中に一気に落下し、乗客達はずぶ濡れになる。ただでさえ寒いのが苦手なアメリカ南部の人達が、わざわざ冬に水に濡れに来たがらないのも無理もないことではある。
通常水族館にとって最大の呼び物である海の動物達によるショーも、同様にやる気がなく、それぞれのショーは一日に一回しか実施されない。しかも、それぞれのショーは時間が重ならない様に配慮されており、ショーが始まる前には、それぞれの会場の周りに訪問客達が、ゲルマン民族の大移動の様に一斉に移動する。
そのせいか海の動物達も気が立っており、アシカとセイウチ達のショーの後には、アシカに餌をあげられる様になっているのだが、アシカ達は一週間に数回しかないごちそうのチャンスを逃さない様に、我を争う様に餌に飛びついてくる。訪問客達に対して大声で吼え、餌を得るためには仲間を痛めつけようとするアシカ達の本能丸出しの姿には、動物と触れ合えるのを楽しみにしていたであろう子供達もひいていた。
一方で見方を変えれば、6時間の営業時間の間に、営業中のアトラクションやショーの全てを楽しめる様に配慮されているとも考えられ、海の動物達と調教師たちとの息の合ったパフォーマンスは、アメリカらしく演出も工夫されていることもあり、満足度は高い。特に、Sea Worldでは「Shamu」と呼ばれるシャチ達によるショーは、光と水で彩られたシャチ達の勇姿が美しい。
というわけで個人的な満足度は決して低くはないのだが、やはり腑に落ちないのは、閉まっている施設が多くない中で入園料金がおそらくオンシーズンと同様の59ドルに設定されていることだ。しかもご丁寧に、ほとんど並んでいないアトラクションに並ばず乗れるという「Quick Queue」なる特別チケットも、15ドルで販売されている。
一週間に12時間しか営業しないのは、オフシーズンにおいても集客が見込める週末の午後に営業を集中するとの戦略だとは思う。しかし、閉まっている施設も多く、営業コストはオンシーズンよりも低いと推測されるので、料金設定を安くして平日も営業すれば、全体でより多くの収益が見込めるのではと邪推してしまうのは、僕がまだアメリカ南部を十分に理解していないということだろうか…。
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まだSea World行ったことないので是非行ってみたいです!!
ステフ様、コメントありがとうございます!
Sea Worldも一度は行く価値ありですよ!名物のシャチのショーは、批判を浴びて、全米のSea Worldで縮小廃止の傾向にあるので、早めに行かれた方がいいかと思います。