石油の街ヒューストンならではの石油にまつわる博物館

古今東西、世界には多くの博物館がある。大英博物館の様に世界中からありとあらゆる事物を収集した場所もあれば、鉄道博物館という様に、特定の事物に特化した場所もある。そして、石油ガス産業が主要産業であるテキサス州ヒューストンには、石油ガス産業に関する博物館がいくつもあるのだ。日本人には馴染みの薄い石油ガス産業の世界をわかりやすく紹介する石油ガスの博物館をここで紹介してみたい。

まずは、ヒューストン最大の博物館であるHouston Museum of Natural Science(ヒューストン自然科学博物館)。ここは、一般には全米最大規模の恐竜の化石を所蔵することでも有名だが、この博物館の一角にWiess Energy Hallと呼ばれる石油ガス産業に関する展示を集めた大きなスペースがある。

展示としては石油ガス産業の上流から下流への流れに沿って続いていて、石油ができる仕組み、石油の探鉱(Exploration)、掘削(Drilling)、生産(Production)、加工(Process)、輸送(Transportation)など、石油ガス産業のそれぞれの工程に関する最新技術を、豊富な実物の展示や作りこまれた映像を通して学ぶことができる。2013092311412841a

201309231141272f0なかでも目玉は、Geovator(ジオベーター)と呼ばれるアトラクションで、約2,300メートルの地下にある石油の層まで、実際に井戸の中を通って降りていく様な気分になり、石油掘削と生産の現場を疑似体験することができる。映像や音響は博物館とは思えない程凝っていて、特に米国のシェール革命を可能にした最新技術Fracking(水圧破砕)を疑似体験できるのは、石油ガス産業に携わる者にはたまらない。

次に紹介するのは、Ocean Star Offshore Drilling Rig and Museum。ここはヒューストン中心部から南東に一時間程車を走らせたガルベストンという街にあり、目の前にはメキシコ湾が広がっている。メキシコ湾は世界中でも、海上油田や海上ガス田が多いことで知られ、石油ガス産業が発達するにつれて、メキシコ湾の中でもより深い場所(Deepwaterと呼ばれる)にある石油ガスを掘るために、リグと呼ばれる掘削用のやぐらが進化してきた。

ここはそんな海上用のリグの詳細やリグの進化の歴史が学べる、おそらく世界でも唯一の博物館であり、リグに関する展示物は数多い。何しろ博物館の外側に、実際に海上掘削に使用されたリグがそのまま展示されているのだ。かなりマニアックな博物館ではあるが、ガルベストンではここ以外にも修理中の巨大なリグをそこかしこに見ることができ、自然にリグについて興味が沸いてくると思う。

写真は修理中のリグとその近くに停泊中のカリブ海クルーズのクルーズ船。こんな景色が見られるのもガルベストンならではだろう。IMG_0272

そして、最後に紹介したいのは、次の写真に写っている博物館。201311171503555f7

と、読者の皆様はただの工場が写っているだけだと思っただろうが、ヒューストンはテキサス州各地で生産される石油や天然ガスを背景に、世界最大の石油化学プラントの集積地となっている。特に、ヒューストンの東の郊外、Houston Ship Channelと呼ばれる石油タンカーが通る運河が内陸まで入り組んでいるエリアに巨大なプラントが多く、その辺りを運転するだけでも、一面に広がる石化プラント群に圧倒される。更に、一般人でも意外と近くまで接近することができるので、石油を精製するプラントが吐き出すフレアと呼ばれる炎さえ見ることができるのだ。石油ガス産業を理解するための博物館という意味では、この石化プラント群も一つの博物館と考えることができると思う。2013111715040073c

ヒューストンの観光地というと何といってもNASAが有名だが、石油ガスの街であるヒューストンを訪問した際は、ぜひこうした博物館に足を運び、石油ガス産業の持つダイナミズムを実感して頂きたい。

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テキサス州の州花ブルーボネットについての意外な事実

日本で春を感じる花見と言えば桜だが、テキサス州では、テキサス州の州花Bluebonnet(ブルーボネット)を愛でることが春の風物詩となっている。そもそもテキサス州は多くが亜熱帯性気候で、我らがヒューストン周辺は日本で言えば奄美大島と同じ緯度なので、年中温暖で、日本の様に四季折々の自然を味わうという感覚は余りない。しかし、3月中旬から4月のブルーボネットの季節だけは、ブルーボネットがそこら中に咲き誇り、春の到来を感じることができるのである。IMG_1517

テキサス州にはいくつもブルーボネットの名所があるが、ヒューストン近郊で言えば、ヒューストンから北西に70マイル程北西に行ったところにあるBrenham(ブレナム)という街は、テキサス中央部のブルーボネット地帯の中心として知られ、まさに見渡す限りのブルーボネットを楽しむことができる。IMG_1523

そんなブルーボネットが何故テキサス州の州花になったかについて、ヒューストンの地元の新聞であるHouston Chronicleの過去の記事に、意外な事実が明らかにされていたので、ここで紹介してみたい。

Houston Chronicleの2008年3月23日付の記事How bluebonnets became state flower(どうやってブルーボネットがテキサスの州花になったか)によると、事の経緯はこうである。

20世紀の初め、テキサスでは男女間の激しい争いがあった。今以上にマッチョイズムが強かった男性の州議会議員たちは、たくましいサボテンや当時南部の主要産業であった綿花こそ、テキサスの州花にふさわしいと考えていた。それに対して、National Society of Colonial Dames of America(全米植民地婦人会)を中心とした女性達は、当時バッファロー・クローバーと呼ばれていたブルーボネットの一品種、Lupinus subcarnosusこそ、テキサスの州花にふさわしいと主張したのだ。クローバーというかわいらしい響きと、バッファローという強さの象徴が両立する呼び名は、確かに人当たりが良くたくましい、テキサスの女性のイメージに合致する。結果、紳士たらんとした男性達は、女性の望みを叶え、Lupinus subcarnosusは1901年にテキサス州の州花となった。

そして、話はこれでは終わらない。実はかわいらしいLupinus subcarnosusに対して、より大きく頑丈なLupinus texensisというブルーボネットの品種もあり、一部の人々はこの品種こそテキサスの精神を象徴するにふさわしいと主張し続けていた。そして何とそれから70年もの時を経て1971年、州議会は州花に関する法律を改正し、Lupinus subcarnosusとLupinus texensisを含む全てのブルーボネットの品種をテキサス州の州花として指定したのである。

こうしてブルーボネットにまつわるテキサスの歴史をひもとくと、この美しさとたくましさの両方を兼ね備えた花もまた違った見え方がしてこないだろうか。IMG_1530

春にテキサス州を訪れる方はぜひ道端に咲くブルーボネットを探して頂きたい。

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ヒューストンが全米で最も都市計画がヒドイ都市に選出!?

アメリカの情報サイトThrillistに、2016年3月4日付でThe 9 Worst Designed Cities in the US(全米で都市計画がヒドイ都市ワースト9)という興味深い記事があり、そのランキングの中で我らがヒューストンが最も都市計画がヒドイ都市に選出されているのだ。他のアメリカ南部の都市もランキングに登場しており、アメリカ南部を理解するのに役立つと思うので、ここで紹介してみたい。

このランキングはThrillistが複数の都市プランナーに取材して、独自に作成したという。まず、ワースト9のランキングを並べると、

9位 モンタナ州ミズーラ

8位 ルイジアナ州ニューオーリンズ(アメリカ南部)

7位 フロリダ州オーランド(アメリカ南部)

6位 ワシントンDC

5位 カリフォルニア州ロサンゼルス

4位 ペンシルバニア州ピッツバーグ

3位 ジョージア州アトランタ(アメリカ南部)

2位 マサチューセッツ州ボストン

1位 テキサス州ヒューストン

さて次に、ヒューストンが何故この様な不名誉な称号を獲得したかを見てみると、同記事は、有名な土地区画法(Zoning Law)の欠如を挙げている。その結果として、「アダルトショップの横に高級デパートがあり、さらにその横に高層オフィスビルがある」といった風景が見られることを指摘している。

確かに、全く異なる建物が隣り合っている様子はヒューストンでよく見られる風景だ。何気なく撮った写真の中でも、歴史的な建物と高層ビルが隣り合っていたりする。IMG_1234

しかし、同記事も認めている通り、ヒューストンの人々は土地区画がない事実を好ましく思っている。この都市では過去、土地区画法が何度も住民投票にかけられては否決されてきたという。

アメリカ南部の都市は総じてその傾向があるが、ヒューストンに初めて来た時に感じたのは、一見したその無機質さだ。ダウンタウンのごく一部のエリアを除いて、歩いてお店を巡れる場所はほぼ皆無で、移動は全て車。結果として、お店は中央に大きな駐車場を備えた多くのモールに集まることになり、最初はどこのモールに行っても同じに見えた。

ところが住み始めてからしばらく建つと、高速道路の脇に、突然大きな教会が現れたり、高級レストランの横に当たり前の様にストリップ劇場が並んでいたりする様子に気づき、この都市が有する混沌、自由に変化を続ける活力に魅了されてくる。それは、元よりフロンティアの時代からテキサスの人々が持っていた自由を愛する土壌を下敷きに、20世紀後半の石油ブームで、世界中から多種多様な人々が移民してきた歴史と無縁ではないだろう。IMG_1580

ちなみに同記事では、そうした都市区画の欠如が、私有車での通勤時間の長期化や公共交通の貧弱さを生み、ひいては最近まで全米で最も肥満率の高い都市という、もう一つの不名誉な称号を保持していたことにつながっているとも指摘している。私見では、確かに公共交通の不足との関連はあると思うものの、肥満率の高さはステーキからコーラに至るまで”Everything is bigger in Texas”の精神で、何でも特大サイズを注文する気風の方が問題だと感じるのだが。。。IMG_1575

 

 

ヒューストンを訪れる際には、都市区画の無さが生み出す混沌という魅力にぜひ注目して頂きたい。

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ヒューストン一の観光地 NASA・ジョンソン宇宙センターの楽しみ方

テキサス州ヒューストンに住んでいて、日本からの訪問者が来ると、ほぼ確実にお連れするのが、ヒューストン一の観光地であるNASAのJohnson Space Center (ジョンソン宇宙センター)だ。私自身10回以上訪問しているはずで、何度も訪問すると、ここをより楽しむ方法がわかってくる。今後訪問を検討している方のために、以下で紹介してみたい。

まず頭に入れておいて頂きたいのは、全米に10施設あるNASAの主な施設の中で、ジョンソン宇宙センターは主に、ミッションコントロールと宇宙飛行士の訓練を担っていることだ。『アポロ13』等の映画で、宇宙飛行士が「ヒューストン、ヒューストン、応答して下さい」といった通信を行っていたのが、ここにあるミッションコントロールセンターだ。一方、宇宙飛行士の訓練施設については、最近では漫画『宇宙兄弟』で登場することでイメージがある方も多いだろう。一方、スペースシャトルの打ち上げ自体はフロリダ州にあるケネディ宇宙センターで行われていて、ここでは見れないので悪しからず。

さて、ジョンソン宇宙センターを訪問する者はまず、センターに併設された観光用施設であるSpace Center Houstonに入ることになる。駐車場に到着すると、飛行機の上に乗っかったスペースシャトル、インデペンデンスのレプリカに出迎えられ、いよいよ期待が高まる。IMG_1325

そしてスペースセンターの内部に入ると、迫力の映像が楽しめるシアターやNASAの宇宙開発に関する展示品を集めたギャラリー、宇宙を体験できるアトラクション等が目の前に現れ、どこから行こうか迷ってしまう。私としては、まず”Destiny Theater”に向かうことをおススメする。NASAの宇宙開発の歴史がまとめられた映画であり、お連れする訪問者がNASAや宇宙開発に余り詳しくない時に重宝する。そして、歴史といっても、決して退屈な記録映画風ではなく、”Human Destiny”(人類の運命)というタイトル通り、非常にドラマティックで迫力のある映像となっており、見る者を飽きさせない。特に、映画の中盤のある場面では、ドキッとさせられること間違いなしだ。IMG_1326

その後、特に時間がない方は、スペースセンター内を最も奥まで進み、トラムツアーに参加することをおススメする。他のアトラクションはあくまで観光客向けに作られたものだが、このトラムツアーでは、トラムに乗って、実際にNASAの職員が勤務しているジョンソン宇宙センター内に入っていくことができる。赤と青の二種類のツアーがあり、一方はミッションコントロールセンター、もう一方は宇宙飛行士の訓練施設に行けるので、興味に応じて選んで頂きたい。どちらのツアーでも、最後にロケットの展示が集まるロケットパークを訪問するが、アポロ計画時代に使用された超巨大なサターンVロケットは必見だ。

また、スペースセンター内の一角には、これまでの宇宙飛行士の写真を時系列で並べたギャラリーがあり、いくつかの写真には日本人宇宙飛行士も含まれているので、時間がある方は探してみるのも楽しい。IMG_1327

最後に、スペースシャトル計画も終わり、NASAの宇宙開発も停滞してしまったと思う方もいらっしゃるかもしれない。しかし、スペースセンター内に展示されているのは、決してアポロ計画やスペースシャトル計画等の過去の宇宙開発の資料だけではなく、人類の未来を担う将来の宇宙開発計画に関する展示もあるのだ。特に、NASAの次世代宇宙船である”Orion”の展示は好奇心をくすぐられる。IMG_1332

10回以上も訪問しているジョンソン宇宙センターだが、決して飽きることはない。来るたびに様々な展示から宇宙開発に携わる人々の情熱に触れ、翌週の仕事を頑張ろうという気にさせられるのだ。ヒューストンを訪れる方には是非ともこのヒューストン一の観光地を訪問して頂きたい。

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テキサスの豪華すぎるガソリンスタンド Buc-ee’s(バッキーズ)

テキサス州には、テキサスに住む人々なら誰でも知っていて、ほとんどの人々が大好きなガソリンスタンドがある。Buc-ee’s(バッキーズと発音する)という名前のそのガソリンスタンドは、ガソリンスタンドと表現するには余りに豪華で、日本人がイメージするガソリンスタンドの概念を遥かに超えている。今回は、テキサスの豪華すぎるガソリンスタンド、Buc-ee’sの魅力に迫ってみよう。

テキサス州では一歩大都市を離れると、何時間も何もない荒野の一本道を走り続けるということがしばしばだ。そんな退屈なドライブにおいて、道路脇にBuc-ee’sの看板が見えてくると、例えそれがまだ何十マイル先であってもワクワクしてくる。そして、遂にBuc-ee’sに到着したことを示す、マスコットキャラクターのビーバーの看板が見えてくると、まるで自分の家に帰ってきた様な安心感に包まれるのである。IMG_1514

Buc-ee’sは、ヒューストンの東の郊外に位置する町Lake Jacksonで、1982年にオープンした。創業当初からオーナーがこだわりを持っていたのは、トイレを徹底的にキレイに保つことだった。アメリカ南部の高速道路上のガソリンスタンドでは、汚く放置されたトイレに遭遇し、ドライブの疲労感が増してしまうこともしばしばだ。しかしBuc-ee’sのトイレは、まるでホテルのトイレかの様に、常にキレイで清潔に保たれている。私はこれは非常に有効な集客戦略だと考えており、その証拠に私自身も、長距離運転中にガソリンが少なくなってきたと感じても、後数十分以内にBuc-ee’sがあるのであれば、清潔なトイレにひかれて、ついBuc-ee’sまで我慢してしまう。IMG_1515

そして、Buc-ee’sのもう一つの特徴はその巨大さだ。通常のガソリンスタンドにはせいぜい10台程度の給油機が設置されているのが普通だが、Buc-ee’sには少ないところでも80台、多いところでは120台もの給油機が並んでいる。これも、どんなに人気でも、Buc-ee’sではガソリンを入れるのに給油機の順番待ちをする必要がない、という安心感を与えてくれる。

Buc-ee’sの魅力はまだ終わらない。店内も通常のガソリンスタンドのコンビニ部分の数倍の大きさで、どこにでもあるお菓子やドリンク、日常品はもちろんのこと、独自ブランドのビーフジャーキーや、テキサスのお土産コーナーまで備えている。更に、食べ物も充実していて、店内の大きなスペースを使ってカウンターを設置し、サンドイッチやタコス、バーベキュー、コラチェなど、テキサスの人々が大好きなメニューをアツアツで提供してくれる。IMG_1516IMG_1518

ちなみに、おまけでもう一つの魅力を挙げると、Buc-ee’sのマスコットキャラクターであるビーバーについても、Tシャツや、ドリンクホルダー、ぬいぐるみや帽子など色々なグッズが販売されている。こうしたグッズは、普段の生活で身に着けていると、それだけで出会ったアメリカ人が笑顔になってくれるという優れものだ。IMG_1520

テキサス州をドライブすることがあれば、ぜひ道路脇のBuc-ee’sの看板を探し、到着するまで我慢してほしい。きっとそれだけの価値はあるはずだから。

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年に一度のカウボーイ・カウガール達の祭典 ヒューストンロデオ

今年もヒューストンにロデオの季節がやってきた。年に一度、アメリカ南部・中西部各地から、馬や牛の扱いに自信のあるカウボーイ・カウガール達がヒューストンに集い、様々な競技で、日頃の修行の成果を競い合うイベントである。個人的には、最もテキサスらしいと思うイベントの一つだ。

ヒューストンロデオは、3月1日-20日の20日間に渡って行われ、この季節になると、普段はアメリカンフットボールの地元チームであるヒューストンテキサンズの本拠地、NRGスタジアムが、馬と牛と熱気に満ちたロデオ会場に早変わりする。IMG_1473

夜になると、NRGスタジアムの周りには、この日のために着飾った人達が集まってくる。着飾ると言ってもスーツやドレスではなく、カウボーイ・カウガール達に合わせて、上半身は柄シャツ、下半身はジーンズとカウボーイブーツ、そして、頭にはカウボーイハットといういで立ちだ。また、会場の周りでは、各地から集まったバーベキューの店舗が味を競うという、もう一つの戦いも行われている。

スタジアムの内部は、アメフトの時と同様、一階席から四階席まで客席が分かれているが、私の経験上、競技に接近できる一階席以外は、詳しい競技の様子が肉眼では見えず、スタジアム中央のスクリーンを通して見ることになるので、余り座席にはこだわらなくてもよいと思う。IMG_1476

いざロデオが始まって驚くのは、種目の多さだ。合間のショーも含めると、10以上の種目があり、それぞれロデオの期間中に、予選から決勝までが進行し、その年のチャンピオンも決まる。

まず日本の方々にも馴染みが深い種目としては、Bull Ridingという暴れ牛にどれだけ乗っていられるかという種目がある。8秒乗れば合格となり、それまでの乗り方と牛の暴れっぷりが評価されるが、素人には点数がどう付けられているのかがなかなかわかりにくい。ただ競技は迫力十分で、下の写真は、ズームが荒くて見にくいが、カウボーイが途中で牛に振り落とされるシーンだ。ただ8秒乗ると言っても、その難しさが伝わるだろうか。IMG_1492IMG_1493

難しさという意味では、素人目に最も難しく見えるのは、Steer Wrestlingという種目。その内容は、走っている馬の上から逃げる牛にジャンプして飛びつき、その牛の首をひねって地面に倒すまでの時間を競うというものだ。恐らく西部開拓時代の実際の作業からヒントを得て考案されたのだろうが、動く動物から動く動物に飛びつくというのはそれだけでも至難の業だ。そして、毎回牛の首をひねって倒すというのは、牛にはダメージはない様だが、どこかの動物愛護団体から抗議がこないか無用な心配をしてしまう。下の写真は、中央の青いシャツの男性が、牛の首に見事飛びついた瞬間だ。IMG_1488

一方、美しさを感じる競技といえば、Barrel Racing。基本的には女性、カウガール達の競技で、会場内に三角形に配置された樽の間を馬で走り抜けるタイムを競うというものだ。カウガール達のたづなさばきで、馬達が樽の周りを最小限のスペースでターンし、最後ゴールに全速力で走り抜ける様は、見ていて美しさすら感じるし、会場も盛り上がる。IMG_1490 (1)

そして、ロデオの全ての種目が終わり、会場の興奮が最高潮に達した時、会場の中央から花火が上がり、第二部であるコンサートに移る。ロデオのコンサートは、一部の大物ポップアーティストを除いて、多くがカントリーミュージックのアーティスト達で、日本の方々にはほとんど馴染みがないだろうが、アメリカ南部では熱狂的な人気を誇るアーティストも多い。私達が訪れた日も会場は大興奮に包まれていた。IMG_1509

何がロデオの魅力かと言えば、カウボーイ・カウガール達の熟練された技術ももちろんながら、会場の周りのテキサスバーベキューの味、普段はテキサスの田舎の牧場で牛や馬の世話をしているであろうカウボーイ・カウガール達の雄姿、テキサスの人々が熱狂するカントリーミュージックの心地よい響きと、自分達がテキサスにいるのだということを全身で感じさせてくれることだ。ロデオ期間中にテキサスを訪れる方はぜひともこのヒューストンロデオを訪れていただきたい。

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テキサスのエアーズロック!? Enchanted Rock (エンチャンテッド・ロック)

広大な大地にそびえ立つ一枚岩としてはオーストラリアのエアーズロックが世界的に有名だが、Everything is big in Texasを自慢にするテキサスには、エアーズロックに負けない巨大な花崗岩の一枚岩が存在する。それが、Enchanted Rock(エンチャンテッド・ロック)である。

テキサス州の州都オースティンから西に二時間弱、平らな大地が広がるテキサス州の中では珍しく、比較的高低差の多い丘陵地帯の一角が、Enchanted Rock State Natural Areaという州立公園となっている。週末に訪れると、州立公園の入り口には、入場待ちの車が長蛇の列をなしている。それもそのはず、同公園のウェブサイトによると、ここは年間で25万人が訪れるテキサスでも最も人気の州立公園の一つだと言う。IMG_1367

一時間程待って漸く入場口にたどり着き、大人一人7ドルの入場料を払って、駐車場に車を停めると、程なくして、巨大な一枚岩に続くトレイルが見えてくる。周囲に何もないことで、その巨岩の存在感は際立っている。高さは425フィート(約130メートル)程だというが、下から見上げると、より高く感じられる。IMG_1372

トレイルの入り口から頂上までは20分程の山歩き。ロープやクサリなどはないが、比較的傾斜が緩やかなので、スニーカー等を履いていれば、女性や子供でも快適に歩ける道だ。アメリカらしく犬を連れて歩いている人々も多い。また、トレイルの途中には、いくつもの奇岩が現れ、歩く人々を飽きさせない。IMG_1377

そして、山頂。どの方向を向いても地平線まで見渡せる360度の大パノラマが広がっており、登ってきた疲れを忘れ、目の前の景色に夢中になってしまう。平坦なテキサス州でここまで広大な景色が見れる場所はあまりないと思う。訪問者達は写真を撮ったり、瞑想にふけったり、思い思いの時間を過ごしている。IMG_1388 (2)

この場所がEnchanted Rock(魔法にかけられた岩)と呼ばれるのには理由がある。何とこの場所は夜になると、ギーギーと声を出したり、うなり声を上げるのだ。更に山頂では幽霊の炎が見えることまであり、トンカワ族をはじめとした地元のネイティブアメリカンからは、長年畏怖の対象となっていた。公園のウェブサイトによると、うなり声は日中に太陽の熱で温められた岩が、夜になって気温が下がり収縮することで起こるという。また、幽霊の炎は、雨が降った後の晴れた夜、岩の上の雨水が反射するのが幽霊の様に見えると考えられている。

しかし、である。昔のネイティブアメリカンでなくとも、この場所に立った者は周囲の自然に対するある種の畏敬の念を感じずにはいられない。例えば、山頂付近にはいつも強風が吹きつけ、人間がここに長く留まることを拒んでいるかの様だ。そして何より、夕暮れ時になった時、遮るものが何もない中、地平線に沈む太陽は何とも神々しい。(なお、下の写真は麓から撮ったものです。)IMG_0041

 

私達は時間の都合でできなかったが、公園内には広いキャンプ場もあり、多くのアメリカ人達がテントを張っていた。夜のうなり声や幽霊の炎を確かめるためにも、機会があればぜひ宿泊してみたい場所だ。

そして、ヒューストンからEnchanted Rockまで長時間運転してくれた友人夫婦に大感謝です!

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オフロ文化は海を越える!? テキサス州の健康ランド

アメリカでの出張時にホテルに宿泊する際、しばしばがっかりさせられるのが浴室だ。シャワーのみのこともしばしばで、たまに浴槽があれば一瞬は嬉しくなる。しかし、そうした浴槽も体をゆったりと横たえるには狭すぎたり、お湯を張り終わる頃には水に変わっていて、ぬる過ぎて入れなかったりする。

そんな中、テキサス州の主要都市の一つダラスには、日本の健康ランドに近い、日本人にとってオアシスの様な場所がある。それがKing Spaだ。IMG_1269

館内にはまず、大きな浴室があり、温度の異なる数種類の風呂とジャグジーをゆったりと楽しむことができる。また、風呂の横には水蒸気のサウナも備え付けられ、アメリカ人達と一緒にじっと座って汗を流せる。テキサス州に来て以来、ここには何回か訪問しているが、最初はアジア系の客層が多かったのが、年々白人や黒人のアメリカ人の比率が増えている気がする。それでもまだ、下着を着たまま浴室に入ってきて、戸惑いながら下着を脱ぐアメリカ人がいたりして微笑ましい。また、ここではタトゥーもお咎めなしだ。

風呂から上がると、利用客は皆、支給されたTシャツとハーフパンツに着替えて、広いラウンジでゆっくり過ごす。IMG_1264

特筆すべきなのは、その施設の多さで、食堂や売店、仮眠室、インターネットスペース、果ては映画ルームまである。実はここは、日本の健康ランドではなく、韓国系アメリカ人によって経営される、韓国のチムジルバンという健康ランドの一種を輸入した施設だ。日本の健康ランドとの大きな違いとして、ここには遠赤外線サウナ、岩盤サウナ、岩塩サウナなど、日本よりも豊富な各種のサウナがあり、入浴後にも思い思いにリラックスした時間を過ごすことができるのだ。IMG_1268

変り種で言えば、どういった効果かはよくわからないが、黄金に彩られたピラミッドサウナなるものまである。IMG_1267

 

料金としては、24時間までは何時間でも滞在できる入場料金が45ドルとなっている。数年前と比べるとだいぶ値上がりしたが、ここの利用客の多くは施設内のラウンジや仮眠室で寝て一夜を明かすことを想定しており、普通のホテルと比べれば、まだ十分に安い。また、追加料金を払えば、韓国式のアカスリのサービスも受けられ、更にたまった汚れを落とすことができる。

私の住むヒューストンで言えば、韓国系人口は日系の10倍、中国系人口は韓国系のさらに10倍と言われるが、ダラスではさらに韓国系の人口が多いという。日本を遠く離れてアメリカに長く住み、ハンバーガーやステーキに疲れた時、ありがたいのはそうした韓国系や中国系住民が経営する施設だ。日本にいる時は隣国との違いを意識することもしばしばだが、アメリカではむしろ文化的な類似性を再認識する。ここKing Spaでも、日本で健康ランドやスーパー銭湯を利用するのと同じ様な感覚で、日頃の疲れを癒すことができる。

そうした東アジア共通のオフロ文化が、今後もアメリカに広がっていくことを期待したい。

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テキサス州にある全米で最も新しい国立公園-ウェイコ・マンモス国定公園

読者の皆様は、アメリカの国立公園と聞いてどこを思い浮かべるだろうか?カリフォルニア州のヨセミテ国立公園だろうか?アリゾナ州のグランド・キャニオン国立公園だろうか?それとも、ワイオミング州のイエローストーン国立公園だろうか?

ここテキサス州には、知名度こそ他の州の有名な国立公園に及ばないが、これまでも12もの国立公園が存在していた。そして、2015年7月10日、テキサス州で13番目の国立公園、そして、現時点で全米で最も新しい国立公園が誕生した。その名もウェイコ・マンモス国定公園(Waco Mammoth National Monument)である。「全米で最も新しい」というだけでも、より貴重な感じがするのもあり、今回はウェイコ・マンモス国定公園の魅力に迫ってみよう。

テキサス州有数の大都市であるダラスとオースティン、その中間付近に位置するWaco(ウェイコ)は、テキサス州中部の中規模都市で、アメリカ人が好きな炭酸飲料、ドクターペッパーの発祥の地としても知られている。そんなウェイコの郊外を車で走っていると、知らなければ見逃しそうな程にこじんまりとした国立公園の看板が現れてくる。IMG_1250

2015年7月10日にオバマ大統領が承認した新しい国立公園、ウェイコ・マンモス国定公園だ。イエロー・ストーン国立公園の様な大きな国立公園の場合、公園のゲートからビジターセンターまで1時間、なんてこともあるが、ここの場合は、ゲートから一分も経たないうちにウェルカムセンターに辿り着ける。IMG_1253

ウェルカムセンターでは、約1時間毎に45分間のガイドツアーが開催されており、このブログを見てここを訪れる方がいらっしゃれば、是非ともガイドツアーを利用することをお勧めしたい。料金も大人一人5ドルと良心的だ。

ガイドツアーでは、広場になっている場所で、氷河期のテキサスについて簡単な説明があった後、早速、この国定公園の最大、かつ、唯一の見せ場であるマンモスの発掘現場の中に移動する。IMG_1257

この公園の始まりは、1978年に、二人の青年がボスケ川の近くで異常に大きな動物の骨を見つけた時に遡る。二人がその骨をウェイコのベイラー大学に持ち込むと、同大学の研究者はすぐにその骨がコロンビアマンモスの体の一部であることを見抜き、すぐに大きな発掘チームを組織する。そして、その後の10年以上にも渡る発掘調査で、この場所には、22頭ものコロンビアマンモスと、ラクダやネコの祖先など、その他の約7万年前の氷河期の動物たちの骨が埋もれていることが明らかになった。

この公園が特筆すべきなのは、そうした動物達の骨が、発掘されたままの状態で保存され、一般公開されていることだ。訪問者は、通路の上から、発掘現場全体をゆっくり眺めることができる。IMG_1261

それぞれの骨のそばには、一つの個体ごとに、「Mammoth O(Male)」などといった看板が設置され、素人でも個体の識別が容易になっている。19頭もの多くの、それも子連れのマンモスが一緒に見つかるのは、全米でも他に例がなく、その理由としては、洪水によって一緒に流されたという説が有力だ。しかも、最も大きいオスのマンモスの個体には、沼地にはまって動けなくなっていた子供のマンモスをキバで助けようとしてたと考えられる形跡が見られ、7万年前の地球の家族愛が垣間見えて興味深い。IMG_1260

イエローストーン国立公園の様な広大な国立公園には規模では負けるが、テキサス州に来ることがあれば、氷河期の地球についての貴重な痕跡として、そして、全米で最も新しい国立公園として、一見の価値はある場所だと思う。

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今、テキサス州ではガソリンの値段はXXXよりも安い!?

原油価格の下落が止まらない。1月7日、ニューヨーク先物市場で、米国産原油の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は時間外取引で一時、1バレル32.1ドルと2003年12月以来およそ12年ぶりの安値を記録した。(WTI原油が12年ぶり安値 時間外で一時32.1ドル)背景には、アメリカや中東などの主要産油国が減産を見送り、過酷なシェア争いを続けているのと、中国等での需要の減退があることは各種報道の通りだ。

その結果、原油から精製されるガソリンの価格も下落を続け、特に世界最大の石油化学プラント地帯を抱えるここテキサス州では、レギュラーガソリンの価格は1ガロン(約3.79リットル)=1.6ドルの驚異的なレベルまで落ちている。日本の単位に直せば、1リットル=約50円になる計算で、日本の半分以下である。(ガソリンの安さがヒューストンの生活コストにどう影響しているかは、Forbesの調査でヒューストンが全米で最も実質収入が高い都市にでも紹介した。)

我らがテキサス州ヒューストンの地元新聞であるHouston Chronicle電子版の12月23日付けの記事11 things that cost more than a gallon of gas (1ガロンのガソリンよりも高い11の物)が、ガソリンと身近な液体の1ガロン当たりの価格を比べることで、ガソリン価格がいかに安いかを表現している。今回、その記事の時点から更に進んで、原油価格が12年ぶりの安値に達したのに際し、当ブログでも改めて検証してみたい。

検証の場所に選んだのは、テキサス州サンアントニオが本社で、テキサス州全土に多数の店舗を抱えるスーパー、H-E-Bだ。IMG_1191

ここを検証の場所に選んだのは、テキサスの人々にとって最も身近なスーパーの一つであることもあるが、それ以外にこのスーパーは、同じ敷地内に自らのブランドのガソリンスタンドを運営しており、同じ企業の価格設定として、公平な比較がしやすいことがある。

まず、基準として、このH-E-Bでのレギュラーガソリンの価格は1ガロン=1.61ドルとなっている。これとH-E-Bの他の商品を比較してみよう。IMG_1190

最初に登場するのは、同じ油であるキャノーラ油。IMG_1177

96液量オンスで7.59ドルなので、1ガロン当たり5.69ドルだ。ガソリンよりも3.5倍高い。但し、これについては、地下から大規模に油を生産するよりも、植物から採取した方がコストが高そうなのは、感覚的にもしっくりくる。

次に登場するのは、テキサスの人々にとって最も身近な液体の一つ、地元テキサスのビールであるShiner Bock。IMG_1172

12液量オンス入りの瓶が6本で9.10ドルなので、1ガロン当たりに直せば、1ガロン当たり5.10ドルだ。ガソリンよりも3.2倍高い。アルコール度数の高い酒は火をつければ燃えるというが、普通にガソリンを燃やした方がよっぽど経済的というわけだ。

ガソリンよりも安い液体はないのかという不安が出てきたところで次に登場するのは、テキサスの田舎のどこにでもいる牛から採れた牛乳だ。IMG_1179

128液量オンス=1ガロン当たり、1.99ドルである。かなり近づいてきたが、ガソリンよりは1.24倍高い。自動車の様な複雑な機械を動かすガソリンが牛乳よりも安いというのは、よくよく考えてみると怖い気もする。

いよいよガソリンよりも安い液体はないとあきらめかけてきたところで、遂にガソリンよりも安い液体を発見した。IMG_1174

そう、水である。テキサス州で飲料水として人気のブランドの一つ、Ozarkaは1ガロン当たり1.29ドルで、ガソリンの80%の価格だ。それにしても、探査、掘削、生産、精製、輸送と様々な過程を経てガソリンスタンドに届けられるガソリンに比べて、地下から比較的容易にくみ上げられる水が八割の値段というのは、割りに合わない様に感じられる。

石油ガス産業は、ここヒューストンの最大の産業だ。万が一ガソリンが水よりも安くなる時が来たら、当地の石油ガス産業はいよいよ壊滅的な打撃を受けるだろう。未だ原油価格回復の兆しは見えないが、底を打つのはそう遠くない将来だということを信じて、この記事を終えたい。

 

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