アメリカ南部の企業③ 実はテキサス発祥のホールフーズ・マーケット

アメリカの自然食品・オーガニック食品のスーパーマーケットとして、全米に展開するホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market, Inc.)は日本でも有名だ。それではこのホールフーズはどこが発祥かご存じだろうか?実はこの企業、セレブが多いニューヨークでもなく、カリフォルニアでもなく、テキサス州の州都オースティン発祥なのである。そして、ホールフーズ創業にまつわるストーリーはまさにアメリカンドリームと呼ぶにふさわしいストーリーだった。

http://www.wholefoodsmarket.com/

ホールフーズ・マーケット社のウェブサイトには同社の創業ストーリーが述べられている。

1978年、大学からドロップアウトした25歳の青年、ジョン・マッキーとその彼女のレネー・ローソンは家族と友人から4万5千ドルの開業資金を借り、オースティンにSafer Wayという小さな自然食品の店を開く。食品を保管していることを理由に住んでいたアパートを追い出された若い二人は何とお店に住むことにし、皿洗い機を使ってシャワーを浴びるという貧乏暮らしだった。

そんな二人も二年後、別の自然食品の店を経営していたクレッグ・ウェラーとマーク・スカイルズという新たなパートナーを得て、1980年に最初のホールフーズ・マーケットをオースティンにオープンする。最初のホールフーズ・マーケットは店舗面積1万5百フィートと当時の健康食品の店舗としては非常に大きく、19人の従業員を抱えていた。

オープンから1年も経たない1981年のメモリアル・デイ(5月の最終月曜日の祝日)、オースティンの町を過去70年で最悪の洪水が襲い、商品の在庫が流され、機材が破損するなど、約40万ドルもの損失が生じる。しかし、常連客や近所の人々がボランティアとして店舗の修復に参加し、銀行や取引先も資金繰りに協力したことで、店舗は洪水からわずか28日後に再オープンする。

苦難の時期を乗り越えたホールフーズ・マーケットは同業の自然食品スーパーの買収を繰り返すことで、テキサス州全土、更には全米で店舗を増やし、2002年にはカナダ、2004年には英国にまで進出する。

そんなホールフーズ・マーケットだが、足元の業績は苦戦中だ。2013年9月期から2016年9月期の三期については、売上高こそ増収を続けている一方、税後利益は二期連続の減益となっている。株価についても(ティッカーコードはWFM)、2015年に約半分の30ドル台まで下落して以降、30ドル台での小幅な値動きを続けている。2016年9月期末のROEは14.5%、配当利回りは約1.8%となっている。

ホールフーズ・マーケットの苦戦の理由として、著者は競合他社の増加があると考えている。上に書いた通り、同社が1980年に最初の店舗をオープンした際には、大型店舗の自然食品のスーパーマーケットは珍しかった。しかし現代では多くの競合がいる。著者が住んでいたテキサス州ヒューストンで考えても、セントラル・マーケットという自然食品スーパーの業態を持つ、テキサス州サンアントニオ発祥のスーパー、H-E-Bや、カリフォルニア州発祥のトレーダー・ジョーズなどがある。ホールフーズはそんな多くの自然食品のスーパーの中で、高品質は評価される一方で値段の高さで知られている。

テキサス州発祥で、自然食品のスーパーマーケットとして長い歴史を誇るホールフーズ・マーケットが、新しい成長ストーリーを描けるか、今後の動向に注目したい。