アメリカ南部の企業② アメリカン航空とユナイテッド航空

テキサス州はアメリカを代表する航空会社の本拠でもある。まず紹介したいのはテキサス州の大都市ダラスに隣接する都市、フォートワースに本拠を置くアメリカン航空だ。本社に隣接するダラス・フォートワース空港をハブ空港とし、米州各地やヨーロッパ、東アジアをつなぎ、2016年12月現在、総旅客運送数で航空会社世界一を誇る。

このアメリカン航空は長らく、二つのAAの文字に鷹のロゴと、「ポリッシュド・スキン」と呼ばれる金属のむき出しの塗装で親しまれていたが、2001年9.11アメリカ同時多発テロ事件で機体が使用されたのを機に経営が悪化し、遂には2011年に連邦倒産法第11章(通称チャプター11)を申請し、事実上破たんする。その後再建したアメリカン航空は2013年に同業のUSエアウェイズを買収する等で拡大し、ロゴや機体のデザインも変更した。

国際線で言えば、南米向け路線に強みを持ち、ハブ空港の一つであるマイアミ国際空港からは南米各地に定期便が飛んでいる。また1998年の結成以来、航空会社連合であるワンワールドの中核となっている。

株価(ティッカーコードはAAL)は2016年、6月に20ドル台まで下落したが、12月末現在では約47ドルまで回復している。配当利回りは約0.8%と米国株としては低めだ。一方でROEは2016年9月末で124%と非常に高い。

ところで、長らくアメリカの航空会社を利用されている方であれば、テキサスの航空会社としてもう一社頭に浮かぶ航空会社がないだろうか。そう、アメリカ第4の都市である我らがヒューストンに本社を有していたコンチネンタル航空だ。しかし、コンチネンタル航空は2010年にユナイテッド航空と経営統合し、統合会社の本社は旧ユナイテッド航空の本社であったシカゴとなってしまう。

但し、地球を模したコンチネンタル航空のロゴは新ユナイテッド航空のロゴとして残り、ヒューストンのジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港は、引き続き新ユナイテッド航空のハブ空港の一つとなっている。また、航空連合で言えば、アメリカン航空のワンワールドと競い合うスターアライアンスの中核となっている。

ユナイテッド航空の株価(ティッカーコードUAL)は、アメリカン航空と同じく2016年6月に30ドル台後半まで下落したが、12月末現在では過去最高の約73ドルまで上昇している。足元は無配で、2016年9月末のROEは32%となっている。

この様にテキサス州はアメリカの大手航空会社が競い合う激戦区であるが、残念ながら優れたサービスを競い合ってはおらず、日本の航空会社等と比べたサービスの悪さは似たり寄ったりである。

アメリカ南部の企業① アメリカ大手通信キャリアAT&T Inc

今回から、アメリカ南部が世界に誇る優れた企業を紹介してみたい。第一弾は日本の皆様も名前は聞いたことがあるであろうAT&T Inc(以下AT&T)だ。

AT&Tはアメリカ大手通信キャリアで、固定電話、携帯電話、インターネット接続サービスなど幅広いサービスを展開している。日本で言えばNTTの様な存在で、携帯電話でも最大規模の4Gネットワークを誇り、競合のベライゾン、スプリント、Tモバイル等と比べて、テキサス州で最もつながり易い印象を受ける。

また、固定通信事業でも成功しており、我が家でも同社のIPテレビ事業であるU-verseを契約していた。U-verseは日本と比べると非常に多チャンネルで、ニュース、スポーツ、音楽、ドラマ、海外チャンネルなど何百種類というチャンネルが視聴できる。(と言っても、次第に視聴するチャンネルは限られてくるが。)2015年には衛星放送大手であるディレクTVを買収し、更に事業領域を広げている。

2016年10月にはアメリカの大手メディアのタイム・ワーナーを850億ドルで買収することを発表したが、メディアと通信キャリアを併せ持つ超巨大企業の誕生により、価格の値上げ等で消費者が犠牲になるとの懸念は強く、未だ当局の承認は下りていない。

AT&Tという名称の由来はThe American Telephone & Telegraph Companyの頭文字から来ており、AT&T Incとしての設立年こそ1983年であるものの、会社の歴史は電話という技術自体を発明したグラハム・ベルが1877年に設立したベル電話会社にまで遡る。2008年以降、本社はテキサス州の大都市の一つであるダラスに位置する。

AT&T(ティッカーコードはT)は米国株投資の世界では、長期連続増配銘柄として有名で、連続増配期間は驚異的な33年間にまで達する(つまり設立及び上場以来、一貫して増配を続けているということだ)。株価はタイム・ワーナー買収の期待もあってこの数か月上昇を続けており、2016年12月29日現在の株価は42.5ドル。それでも、配当利回りは4.5%もあり、日本の大企業ではほとんど見ることができない数値だ。ROEも10.9%となっている。

それではAT&Tは地元ダラスにどういった貢献をしているのだろうか。同社のウェブサイトに2016年10月9日付で発表されたAT&T and City of Dallas Plan Downtown Destination for Eating, Shopping and Playing(AT&Tとダラス市は食事したり、買い物したり、遊んだりできるダウンタウンのスポットを計画中)という記事で、これまでの貢献と今後の計画について述べている。

同記事によると、2008年にグローバル本社をダラスに移して以来、ダラスのダウンタウンでの雇用は移転前の倍の約5,700人に達し、本社の改築のために1億㌦以上の投資を実施したという。そして、2016年にはAT&Tがダラスのダウンタウンから移転するという噂があったが、今回の発表によると、AT&Tはダラスのタウンタウンに留まり、それどころか更に多くの資金を投じ、ダラス市と共同で、AT&T Discovery Districtという一般開放された商業スペースを整備することを計画しているという。

積極的なM&Aを続けるとともに、地元ダラスへの貢献も忘れない巨大企業AT&Tの今後に注目したい。