読者の皆様は、アメリカの国立公園と聞いてどこを思い浮かべるだろうか?カリフォルニア州のヨセミテ国立公園だろうか?アリゾナ州のグランド・キャニオン国立公園だろうか?それとも、ワイオミング州のイエローストーン国立公園だろうか?
ここテキサス州には、知名度こそ他の州の有名な国立公園に及ばないが、これまでも12もの国立公園が存在していた。そして、2015年7月10日、テキサス州で13番目の国立公園、そして、現時点で全米で最も新しい国立公園が誕生した。その名もウェイコ・マンモス国定公園(Waco Mammoth National Monument)である。「全米で最も新しい」というだけでも、より貴重な感じがするのもあり、今回はウェイコ・マンモス国定公園の魅力に迫ってみよう。
テキサス州有数の大都市であるダラスとオースティン、その中間付近に位置するWaco(ウェイコ)は、テキサス州中部の中規模都市で、アメリカ人が好きな炭酸飲料、ドクターペッパーの発祥の地としても知られている。そんなウェイコの郊外を車で走っていると、知らなければ見逃しそうな程にこじんまりとした国立公園の看板が現れてくる。
2015年7月10日にオバマ大統領が承認した新しい国立公園、ウェイコ・マンモス国定公園だ。イエロー・ストーン国立公園の様な大きな国立公園の場合、公園のゲートからビジターセンターまで1時間、なんてこともあるが、ここの場合は、ゲートから一分も経たないうちにウェルカムセンターに辿り着ける。
ウェルカムセンターでは、約1時間毎に45分間のガイドツアーが開催されており、このブログを見てここを訪れる方がいらっしゃれば、是非ともガイドツアーを利用することをお勧めしたい。料金も大人一人5ドルと良心的だ。
ガイドツアーでは、広場になっている場所で、氷河期のテキサスについて簡単な説明があった後、早速、この国定公園の最大、かつ、唯一の見せ場であるマンモスの発掘現場の中に移動する。
この公園の始まりは、1978年に、二人の青年がボスケ川の近くで異常に大きな動物の骨を見つけた時に遡る。二人がその骨をウェイコのベイラー大学に持ち込むと、同大学の研究者はすぐにその骨がコロンビアマンモスの体の一部であることを見抜き、すぐに大きな発掘チームを組織する。そして、その後の10年以上にも渡る発掘調査で、この場所には、22頭ものコロンビアマンモスと、ラクダやネコの祖先など、その他の約7万年前の氷河期の動物たちの骨が埋もれていることが明らかになった。
この公園が特筆すべきなのは、そうした動物達の骨が、発掘されたままの状態で保存され、一般公開されていることだ。訪問者は、通路の上から、発掘現場全体をゆっくり眺めることができる。
それぞれの骨のそばには、一つの個体ごとに、「Mammoth O(Male)」などといった看板が設置され、素人でも個体の識別が容易になっている。19頭もの多くの、それも子連れのマンモスが一緒に見つかるのは、全米でも他に例がなく、その理由としては、洪水によって一緒に流されたという説が有力だ。しかも、最も大きいオスのマンモスの個体には、沼地にはまって動けなくなっていた子供のマンモスをキバで助けようとしてたと考えられる形跡が見られ、7万年前の地球の家族愛が垣間見えて興味深い。
イエローストーン国立公園の様な広大な国立公園には規模では負けるが、テキサス州に来ることがあれば、氷河期の地球についての貴重な痕跡として、そして、全米で最も新しい国立公園として、一見の価値はある場所だと思う。
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