今日本では、日本マクドナルド創立45周年を記念して再発売されたテキサスバーガーが話題になっている。当ブログでは、実際のテキサス州のバーガーを食べ歩き、日本未進出のテキサスのバーガーレストランを何度か紹介してきており、テキサスのバーガーには詳しいブログという自負がある。そこで、日本の「テキサスバーガー」がどれほどのものか、実際にマクドナルドを訪問してみた。
日本でのマクドナルドと言えば、過去数年の一連の不祥事で客足が遠のき、業績の停滞が続いているという印象だったが、いざ訪問してみると、若者を中心に多くの顧客でにぎわっており、やはり話題のテキサスバーガーを注文している人が多い様だ。早速、筆者もテキサスバーガーセット(Mセット 790円)を注文してみる。少なくともマクドナルドにしては高めの価格設定はテキサス的とは言えそうだ。そして、しばらくして出てきたのがこのバーガーである。
なんとテキサスバーガーを包んだ箱の上面には、TEXASの文字の上に、テキサスの象徴である一つ星(ローンスター)が!この星がローンスターであることを認識している日本人がどれだけいるかはわからないが、それでもローンスターを箱にプリントした日本マクドナルドの心意気には感服する。
それでは、肝心の中身のバーガーを見てみよう。
バンズは三段になっており、一段目と二段目の間にはベーコンとフライドオニオンが、二段目と三段目の間にはビーフパティとチーズが収まっている。まず目につくのは、日本のバーガーにしては特大のパティで、1/4ポンド(通常のパティの2.5倍)だそうだ。以前当ブログで紹介したテキサス州の人気バーガーレストランであるFuddruckers(ファドラッカーズ)では、基本サイズが1/3、1/2、2/3ポンドの三種類であり、それと比べれば必ずしも大きいとは言えないが、Everything is bigger in Texasの精神には沿っているバーガーだと思う。
テキサスバーガーがテキサスらしさを出そうとしているもう一つの特徴は食べてみるとわかる。素材を引き出すソースとしては、上部の具材にはバーベキューソースが、下部の具材には粒マスタードレリッシュがかかっている。バーベキューソースはその名の通り、テキサス州の代表的料理の一つであるテキサスバーベキューにかけるソースだが、テキサス州ではバーベキューをパンで挟んでサンドイッチにすることはあっても、ビーフパティの上にバーベキューソースをかけることはない。甘辛いバーベキューソースはビーフパティとはあまり合っていない気がする。
そしてもう一つの違和感は野菜の具材が見当たらないこと。その理由について、日本マクドナルドが運営しているマガジン「バーガーラブ」の、開発者が語る 「テキサスバーガー」誕生の舞台裏という記事を読んで衝撃を受けた。開発者としてはバーガーに生野菜を入れないことで、「とことんテキサスのイメージを引き出した」とのことで、そのテキサスのイメージとは砂漠や荒野のイメージだという。開発者としては、そうした砂漠や荒野をかけるカウボーイのワイルドさや力強さをイメージしたということだし、日本人のテキサスに対するイメージが砂漠や荒野ということも否定しないが、テキサス在住経験者としては複雑な思いだ。
本当のテキサス州のバーガーにももちろん、レタスやトマト、オニオンという野菜は入っているし、最近の日本と同じく地産地消でテキサス州で採れた野菜にこだわっているお店も多い。また、テキサス州のバーガーと言えば、唐辛子の一種であるハラペーニョのピクルスによる辛さが、バーガー全体の味を引き締める重要な要素だ。それを「生野菜を入れないことでテキサスらしい」と言ってしまうのはどうだろう。開発者の方々はテキサス州での現地調査はしたのだろうか。
日本マクドナルドのテキサスバーガー、テキサス州での経験を忘れて、一つのバーガーとして捉えれば、個性的ではあると思うけれど、いつか本当のテキサス州のバーガーレストランが日本に進出してほしいとは思わされた味ではあった。
↓テキサス州を代表するバーガー、Fuddruckers(ファドラッカーズ)の記事はこちら