この週末、我らがテキサス州ヒューストンが誇るヒューストンバレエ団が千葉県千葉市美浜区で初めての日本公演を開催している。ヒューストンバレエ団が千葉での公演に至ったのは、ヒューストンと千葉との絆、そして関係者の粘り強い努力によるものだった。
ヒューストンというと、石油の街をイメージする人が多いと思う。しかし、実際にはヒューストンはバレエやオペラ、オーケストラなど多数の文化団体を有するアートの街で、特にヒューストンバレエ団は1969年設立の歴史ある団体だ。多文化の街ヒューストンらしくダンサーの文化的背景も様々で、特に日本人ダンサーは現在6人も集まっている。
そんなヒューストンバレエ団に長く貢献してきた日本人ダンサーが、2016年まで12年間ヒューストンのステージに立ち続けていた楠崎なおさんだ。愛媛県で生まれた楠崎さんは10歳の時に家族とともに渡米し、最初はワシントンDC、次いでボストンで暮らす。ボストンでバレエのトレーニングを積み、ボストンバレエ団のダンサーとなった楠崎さんは、ヒューストンバレエ団の芸術監督であるスタントン・ウェルチの作品に感銘を受け、後にヒューストンバレエ団に移籍する。
楠崎さんはダンサーとしての活躍とともに、芸術が周りの人々に対して何ができるのかを考え続けてきた人でもあった。2011年の東日本大震災の後には、ヒューストンバレエ団によるチャリティーイベントを企画し、また、2015年には日本の昔話に基づく創作バレエ作品である『TSURU』を手掛けた。
そんな楠崎さんにとってヒューストンバレエ団の日本公演は長年のプロジェクトであった。ヒューストンと千葉市が今年で45周年となる姉妹都市であること、そして、先述の『TSURU』の振付を手掛けた小尻健太氏の地元が千葉市美浜区であることの縁もあったが、何よりも楠崎さんを中心とした関係者の粘り強い努力によって、今回の公演が実現したものだ。
公演初日の7月22日、会場となった美浜市民ホールには、多くの観客が詰めかけ、創作バレエと古典バレエ作品を組み合わせたプログラムに酔いしれた。第一部の『TSURU』ではヒューストンバレエ団で長きにわたってステージを共にした楠崎さんと吉山シャール氏の息の合ったダンスが観客を魅了し、第三部ではスタントン・ウェルチの振付作品を踊るヒューストンバレエ団の多くのダンサー達のパフォーマンスを、同じくヒューストンで活躍するピアニストである三牧可奈さんの演奏が彩った。
ダンサー達は今回の日本公演後、休む暇なくヒューストンに戻り、次のシーズンに向けた練習を続けるという。これからも新たな挑戦を続けるヒューストンバレエ団に期待したい。