カリフォルニア州で12月2日に発生した銃乱射事件は、全米を大きな不安で包んでいる。
アメリカ南部と言えばアメリカの中でも有数の銃社会だ。普通の人々が当たり前の様に銃を所有し、ローカルニュースを見れば毎日の様に発砲事件が起きている。しかし、ここテキサス州ヒューストンには、銃団体からの抗議にも関わらず、自らのポリシーに従って、「銃持込み禁止」の看板を掲げ続ける動物園があった。
地元の新聞であるHouston Chronicle電子版の11月25日付けの記事Houston Zoo reinstates “no gun” signs despite controversy(ヒューストン動物園は論争にも関わらず「銃持込み禁止」の看板を元に戻した)に詳細が記載されている。
事の顛末としては、まず本年9月の時点で、ヒューストン動物園が「銃持込み禁止」の看板を掲げたところ、銃保持者のための法律事務所であるTexas Law Shieldの弁護士が動物園とその関係団体に対して、看板の撤去を求める要望書を送付し、動物園は一度は看板を撤去することになる。
しかし、動物園側も再度顧問弁護士と検討を重ねた結果、その根本において、「教育的施設(Educational Institution)」である動物園にとっては、銃の持込みを禁止する看板を掲げることは禁止されていないとの判断に至り、11月下旬の時点で再掲示を実施したのだと言う。動物園側によれば、テキサスの刑法では、学校や教育的施設への銃の持込みは禁止されているという。
日本人的な感覚からすれば、子供達が色々な動物に会えて楽しめる場である動物園に銃が馴染むとは思えず、そもそも上記の様な論争があること自体に違和感がある。しかし両当事者は大真面目であり、同じHouston Chronicle記事によると、銃保持者側の顧問弁護士は動物園側の措置に憤慨しており、テキサスの法律上、「教育的施設」とは、カリキュラムや学位を授与するシステムを有する施設に限定されるとして、近く動物園側に再度抗議をする予定だという。
動物園側が論争を続けてまで守ろうとしている価値が何なのか気になり、今回動物園を訪れてみた。
動物園の入り口に着くと、その右側の壁に、例の「銃持込み禁止」の看板が大きく掲げられている。
そして、自分たちが「教育的施設」であるという主張を裏付けようとするかの様に、園内ではいくつもの教育的なイベントが用意されている。例えば、30分おきに園内のどこかのエリアで、飼育員たちが自らが飼育する動物について語る場が用意されている。
それぞれの動物たちの住まいも、檻に囲まれているわけではなく、広いスペースを使って、できる限り自然に近い状態が再現されている。更に、「ADOPT」といって、気に入った動物の里親になれるプログラムも用意されており、子供たちは動物園を出た後も、継続的に動物の成長に関心を持てる様になっている。
何より僕の心をひきつけたのは、動物達を間近に見て、また、実際に触れて、無邪気に喜ぶ子供達の笑顔だ。正式なカリキュラムはなくとも、一日動物園を訪れた後では、子供達はすっかり動物に詳しくなり、また、絶滅の危機に瀕している動物への思いやりを持つ様になるだろう。確かにそんな場に、銃の存在はふさわしくない。
アメリカにおいて銃規制反対派の人々はしばしば、アメリカ合衆国憲法修正第二条に基づき、個人が武装する不可侵の権利を主張して、銃規制に反対する。しかし、頻発する銃犯罪は何らかの規制が無くしては、社会の安定が揺らぎかねないことを示唆している。少なくとも、子供達が自然環境や動物達を含めて、次の時代のあり方を学び、考える場には、銃のない平和な空間が保たれてほしいものだと思う。
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