銃を見せながら食事したら25%引!? テキサス州で商業施設での銃のOpen Carryが合法化

ワシントンではオバマ大統領が涙ながらに銃規制の強化を訴えている状況下、ここテキサス州では1月1日より商業施設での銃のOpen Carryが合法となり、地元のレストランやスーパーが対応に追われている。レストランで食事をしていたら後ろの客が腰に銃を下げていた、という状況に心の準備をするためにも、ここでまとめてみたい。

Texas Department of Public Safetyのウェブサイトが、1月1日から施行された法律、House Bill 910について解説している。それによると、銃を隠して携帯する免許(Concealed Handgun License(CHL)の保有者は今後、一定の例外を除いて、周りに見える形で(Openly)、銃を肩か腰に下げて携帯することが許されるという。

一定の例外の一つは、高等教育施設で、「銃持込み禁止」の看板を掲げ続けるヒューストン動物園の取り組みを以前紹介した。

また、レストランやスーパーなどの商業施設については、自身の施設内に銃のOpen Carryを認めるかは各経営者の判断に任されており、銃のOpen Carryを禁止したい経営者は、”30.07 sign”と呼ばれる看板を店の入り口に掲げなければならない。これまでのところ各経営者の判断は様々だ。

我らがヒューストンから北西の郊外に位置するサイプレスにあるバーベキューのレストラン、Brooks Placeは、法律の施行日である1月1日に、銃をOpen Carryして来店した客に対して、25%の割引を実施することを発表し、地元の各メディアの注目を集めた。地元ヒューストンの新聞Houston Chronicle電子版の1月3日付の記事Opening weekend of open carry quiet(Open Carryの最初の週末は静か)によると、新しい法律の強固な支持者であるオーナーのトレント・ブルックス氏は、その日、45人が実際に割引を獲得したことを喜び、同紙のインタビューに対して、次の様に語っている。

“I support the Second Amendment,” … “It creates a safer environment for someone dining here – if there was ever someone trying to rob us – or rob our patrons, they’d walk in here, see people with guns. That should be a deterrent.”

(私は(個人が武装する権利を規定した)アメリカ合衆国憲法修正第二条を支持する。(Open Carryは)、ここで食事をする人々に対して、より安全な環境を作りだすんだ。もし、誰かが私達や、うちの常連に対して強盗を働こうとしても、ここに入った瞬間、銃を持った人々を見ることになる。これは抑止力になるんだ。)

このレストランは、決してオバマ大統領が敵視している例の過激な銃ロビイスト団体が経営しているレストラン等ではなく、テキサス州のおいしいバーベキューのリストに入ったこともある、バーベキューの人気店である。実際、オーナーのコメントは、銃所持に肯定的なテキサスの普通の人々の感覚から、そこまで遠くはないと思う。

一方、テキサス州の港湾都市、コーパスクリスティーで誕生し、テキサス州を中心にアメリカの10の州で展開するハンバーガーチェーン、Whataburgerは、既にOpen Carryが合法となっている他の州でも、Open Carryを認めない方針で知られており、今回のテキサス州のケースでもいち早く立場を明確にした。IMG_1167

同社は法律が可決された直後の昨年7月の時点で、自社のホームページで、社長兼CEOであるプレストン・アトキンソン氏の名前で、銃のOpen Carryに関するプレスリリースを発表している。一部を引用すると、

Whataburger supports customers’ Second Amendment rights and we respect your group’s position, but we haven’t allowed the open carry of firearms in our restaurants for a long time. It’s a business decision we made a long time ago and have stood by, and I think it’s important you know why. (…) We’ve had many customers and employees tell us they’re uncomfortable being around someone with a visible firearm who is not a member of law enforcement, and as a business, we have to listen and value that feedback in the same way we value yours.

(Whataburgerは、憲法修正第二条を支持し、(銃を支持する)あなた方の団体の立場も尊重しています。しかし、私達は長い間、自分達のレストランで、銃火器のOpen Carryを認めてきませんでした。これは、私達がかなり前に実施し、守ってきたビジネス上の決断であり、私はあなた方にその理由を知ってもらうことが重要と考えています。(…中略…)私達は、警官でもないのに、目に見える形で銃火器を所持している人間が回りにいることは不安だと語る、多くの顧客や従業員を抱えています。ビジネスとして、私たちはあなた方を尊重するのと同じやり方で、こうした反応に耳を傾け、尊重しなければならないのです。)

目に見える形で銃を保持した人が近くで食事していることを安心と感じるかどうかについて、全く正反対の考え方が存在するというわけだ。日本人の感覚には、Whataburgerの考え方の方が馴染みやすい。写真は、経営者が大切にしているWhataburgerの店内の雰囲気である。IMG_1170

しかし、気になることがある。上記の写真を撮りにWhataburgerを訪問したところ、経営者の力強い言葉にも関わらず、銃のOpen Carryを禁止するのに必要な”30.07 Sign”がどこにも見当たらない。さらに、この記事を書くに当たり、いくつかのレストランやスーパーを訪問したが、どこにも”30.07 Sign”は見当たらなかった。

これは、”30.07 Sign”が持つ強すぎる効果によるのかもしれない。テキサス州の歴史ある月刊誌Texas Monthly電子版は、1月5日付のHow Open Carry Forced Businesses in Texas To Take A Side In The Cultural War(Open Carryはテキサスの商業施設に対して、文化戦争のどちらか一方の側に立つ様に強いている)と題する記事で、Open Carry支持にしても、反対にしても、立場を明確にした商業施設は、反対の立場の側から、ソーシャルメディア等を通じて反発を受けていることを指摘している。少しでも多くの集客を見込むためには、当面の間、目立つ看板を掲げず、立場をあいまいにすべきなのかもしれない。

今後、Open Carryの合法化に起因する事件が起きないことを切に願っているが、何かが起きた時、いよいよ各レストランやスーパーは決断を迫られることになるだろう。

<2016年1月12日追記>

遂に銃のOpen Carryを禁止する”30.07 Sign”を入り口に掲げているレストランを発見しました。以前テキサス州のこだわりハンバーガーとして紹介したFuddruckersです。この”30.07 Sign”が広がるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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テキサス州ヒューストンで黒人の新市長が誕生

現在、アメリカでは来年の大統領選挙に向けて、移民やイスラム教徒に関する問題発言にも関わらず、共和党のドナルド・トランプ候補による「トランプ旋風」が吹き荒れている。ブッシュ元大統領一族のお膝元でもあり、長年強固な共和党の地盤であるここテキサス州について言えば、共和党内の対抗馬で同じく保守的な発言の多いテッド・クルス候補も元気がいい。

しかし、テキサス州の中でも、僕の住むヒューストンは政治的にリベラルなことで知られている。例えば、ヒューストン市民から人気を集め、3期6年にわたって市長職を務めてきたアニス・パーカー現市長は、女性市長であるだけでなく、自らがレズビアンであり、同性のパートナーと養子の子供達がいることを公言している。

そうしたリベラルな政治風土は、ヒューストンが全米第四の巨大都市であること、そして、全米でも有数の人種的に多様な都市であることと無関係ではないだろう。2010年の国勢調査に従えば人口的に、ヒューストンの多数派はラティーノ(44%)であり、アングロサクソン系の白人(26%)や、黒人(25%)よりも圧倒的に多い。

そうした中、年末でパーカー現市長が任期の限度である3期を全うするため、彼女の後継者を選ぶ市長選が行われることとなった。ヒューストン外でも大きな注目を集めた市長選だったが、11月の第一回投票では結果が出ず、12月12日の決選投票にもつれ込む。決選投票に残った二人の候補者とは、実業家で保守派のビル・キング氏と、テキサス州の民主党下院議員を長年務めてきたベテラン政治家のシルベスター・ターナー氏だ。

決選投票前には、”BACK TO BASICS”をスローガンに掲げ、財政の緊縮や交通インフラの整備を公約に掲げたビル・キング氏の立看板がヒューストンの街中に溢れ、テレビのCMでも、キング氏が頻繁に登場した。対するターナー氏はメディアへの露出は少ないものの、支援者と地道な選挙キャンペーンを続けている様だった。IMG_0781

そして、決戦当日。混戦を暗示するかの様に大荒れの天気の中、夜遅くまで結果がわからない状態が続いたが、最終的にはターナー氏が4,100票差の僅差で勝利し、ヒューストンの歴史上、二番目の黒人市長に選ばれた。

地元の新聞Houston Chronicle電子版の12月13日付けの記事Voter mobilization, black turnout drive Turner win(有権者を投票所に行く様に仕向け、黒人の投票率が高かったことがターナーの勝利につながった)では、キング氏は、白人が多数を占める選挙区では71パーセントの得票をしたのに対し、ターナー氏が黒人が多数を占める選挙区で93パーセントの得票を獲得したのに加え、ラティーノの住民が多い二つの選挙区で多数を得たことが、ターナー氏の勝利につながったことを指摘している。

そうした支持層と結びつくかの様に、ターナー氏は選挙中、貧富の差の解消や、教育の機会均等を主張することで指示を集めていた。しかし、折からの石油産業の不況でそうした社会福祉の財源は必ずしも明確ではなく、実際、12月12日付けの別のHouston Chronicleの記事Turner defeats King to become Houston’s next mayor(ターナーがキングを破りヒューストンの次の市長に当選)では、ヒューストンでは来年、1.26億ドルもの財政赤字が予想されることが述べられ、敗北はしたものの、キング氏の方が具体的な財政再建プランを持っていたことを指摘している。

多様なヒューストンの住民をまとめ上げるには、ターナー氏の人種的なバックグラウンドや、州の下院議員としての長年の経験が有利に働くこともあるだろう。年明けの就任以降、新市長がどの程度具体的な施策を打ち出せるかに注目していきたい。(写真は夕暮れのヒューストン市庁舎)IMG_0783

 

 

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Forbesの調査でヒューストンが全米で最も実質収入の高い都市に

読者の皆様はアメリカで収入の高い都市と聞いてどこを思い浮かべるだろうか?世界の金融の中心ニューヨークだろうか?それとも、ITベンチャーが生まれ続けるシリコンバレーだろうか?

Forbesの11月19日付けの記事(The Cities Where Your Salary Will Stretch The Furthest 2015(2015年あなたの給料を最も活用できる都市)によると、Praxis Strategy Groupという調査機関がForbesのために実施した調査で、「実質収入」の高い都市として、東海岸でも西海岸でもなく、何とアメリカ南部の我らがヒューストンが第一位に選ばれたという。

まず、ランキングを見てみると、

第一位:テキサス州ヒューストン及びその郊外

第二位:カリフォルニア州シリコンバレー

第三位:ミシガン州デトロイト及びその郊外

第四位:コネティカット州ハートフォード及びその郊外

第五位:テキサス州ダラス及びその郊外

と、テキサス新幹線で結ばれる予定のテキサス州の二大都市、ヒューストンとダラスが第五位までにランクインしている。

こうした少々驚きのランキングになるのは、この調査の独特の調査手法による。この調査では、全米の53の主要都市を調査対象にして、平均年収を、不動産価格と物価の違いを総合した生活コストで調整しているのだ。

ヒューストンの主要産業といえば、航空宇宙や医療産業もあるものの、何といっても石油産業だ。原油価格が7年ぶりの安値をつけ、当地の石油関連産業にはリストラの嵐が吹き荒れている今、ヒューストンの年収が全米で最も高くなるとは考えにくい。実際、この調査でも第一位のヒューストンの平均年収が6.0万ドルなのに対して、第二位のシリコンバレーの平均年収は9.8万ドルだ。

一方で、生活コストが安いというのは確かに実感がある。まず、年収にはマイナスに働く原油価格も生活コストにはプラスだ。公共交通機関が貧弱なヒューストンでの交通手段と言えば自家用車が基本だが、石油産業の中心ではガソリン価格も安い。近所のエクソンモービルのガソリンスタンドでは、レギュラーガソリンで、1ガロン1.75ドルをつけていた。これは、日本の単位に直せば、1リットル56円となり、日本の平均ガソリン価格の半分以下だ。IMG_0771

また、Forbesの記事でも触れられているが、更に大きいのは住宅コストの安さだ。もちろん、ヒューストンでも中心部では住宅コストは比較的高くなるが、この調査では、ウッドランズやシュガーランドなどの主な郊外地域も含んでいる。郊外では、ダウンタウンで1ベッドルームのアパートに住む様な家賃で、一戸建てに住むことができる。写真は一般的な郊外の住宅街の町並みだ。

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そして、ガソリン価格の安さは、ヒューストンの住民にとって、郊外に住むという選択肢をより現実的にさせる。実際、ヒューストンはアメリカの主要都市の中でも、最も郊外に広がった都市として知られ、郊外地域も含めたヒューストン都市圏(グレーター・ヒューストン)としては、全米第4位の人口を誇る。

結果として、生活コストを調整後の実質収入は、第二位のシリコンバレーが5.6万ドルに対して、ヒューストンは6.2万ドルで第一位となる。

しかし、テキサス新幹線についての記事でも書いたが、こうしした状況も今後は変わってくるかもしれない。安い生活コストの影響もあり増え続ける人口は、交通渋滞の深刻な悪化を生んでおり、生活の質の向上を求めて、少々高い家賃を払っても、中心部に住みたがる人々も現れてきている。そうした新しいタイプのヒューストン住民が増えてくれば、レストランやスーパー等にしても、高級路線の店舗が出てくるだろう。

Forbesはこの調査を3年おきに実施しているが、変わりゆく都市ヒューストンが次回の調査でも第一位を保っているかが注目される。

 

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「銃持込み禁止」の看板を掲げ続けるヒューストン動物園

カリフォルニア州で12月2日に発生した銃乱射事件は、全米を大きな不安で包んでいる。

アメリカ南部と言えばアメリカの中でも有数の銃社会だ。普通の人々が当たり前の様に銃を所有し、ローカルニュースを見れば毎日の様に発砲事件が起きている。しかし、ここテキサス州ヒューストンには、銃団体からの抗議にも関わらず、自らのポリシーに従って、「銃持込み禁止」の看板を掲げ続ける動物園があった。

地元の新聞であるHouston Chronicle電子版の11月25日付けの記事Houston Zoo reinstates “no gun” signs despite controversy(ヒューストン動物園は論争にも関わらず「銃持込み禁止」の看板を元に戻した)に詳細が記載されている。

事の顛末としては、まず本年9月の時点で、ヒューストン動物園が「銃持込み禁止」の看板を掲げたところ、銃保持者のための法律事務所であるTexas Law Shieldの弁護士が動物園とその関係団体に対して、看板の撤去を求める要望書を送付し、動物園は一度は看板を撤去することになる。

しかし、動物園側も再度顧問弁護士と検討を重ねた結果、その根本において、「教育的施設(Educational Institution)」である動物園にとっては、銃の持込みを禁止する看板を掲げることは禁止されていないとの判断に至り、11月下旬の時点で再掲示を実施したのだと言う。動物園側によれば、テキサスの刑法では、学校や教育的施設への銃の持込みは禁止されているという。

日本人的な感覚からすれば、子供達が色々な動物に会えて楽しめる場である動物園に銃が馴染むとは思えず、そもそも上記の様な論争があること自体に違和感がある。しかし両当事者は大真面目であり、同じHouston Chronicle記事によると、銃保持者側の顧問弁護士は動物園側の措置に憤慨しており、テキサスの法律上、「教育的施設」とは、カリキュラムや学位を授与するシステムを有する施設に限定されるとして、近く動物園側に再度抗議をする予定だという。

動物園側が論争を続けてまで守ろうとしている価値が何なのか気になり、今回動物園を訪れてみた。

動物園の入り口に着くと、その右側の壁に、例の「銃持込み禁止」の看板が大きく掲げられている。

IMG_0734そして、自分たちが「教育的施設」であるという主張を裏付けようとするかの様に、園内ではいくつもの教育的なイベントが用意されている。例えば、30分おきに園内のどこかのエリアで、飼育員たちが自らが飼育する動物について語る場が用意されている。IMG_0739IMG_0766

それぞれの動物たちの住まいも、檻に囲まれているわけではなく、広いスペースを使って、できる限り自然に近い状態が再現されている。更に、「ADOPT」といって、気に入った動物の里親になれるプログラムも用意されており、子供たちは動物園を出た後も、継続的に動物の成長に関心を持てる様になっている。

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何より僕の心をひきつけたのは、動物達を間近に見て、また、実際に触れて、無邪気に喜ぶ子供達の笑顔だ。正式なカリキュラムはなくとも、一日動物園を訪れた後では、子供達はすっかり動物に詳しくなり、また、絶滅の危機に瀕している動物への思いやりを持つ様になるだろう。確かにそんな場に、銃の存在はふさわしくない。

アメリカにおいて銃規制反対派の人々はしばしば、アメリカ合衆国憲法修正第二条に基づき、個人が武装する不可侵の権利を主張して、銃規制に反対する。しかし、頻発する銃犯罪は何らかの規制が無くしては、社会の安定が揺らぎかねないことを示唆している。少なくとも、子供達が自然環境や動物達を含めて、次の時代のあり方を学び、考える場には、銃のない平和な空間が保たれてほしいものだと思う。

 

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一週間に12時間しか営業しない水族館

日本でも、一週間に数日、数時間ずつしか営業しないラーメン屋や料亭など、店主の極度のこだわりが感じられる名店というのは存在する。たいていそうした店は、訪れるのが困難な分、大きな充実感が得られるものだ。しかし、ここアメリカ南部には、一週間で週末だけ、6時間ずつしか営業しない水族館が存在した。

それがこのSea World San Antonioだ。テキサス州が誇る内陸部の観光都市、サンアントニオに位置するこの水族館、ホームページを見ても、11月は第四週、12月は第三週と第四週を除いて、週末の、しかも午後の6時間ずつしか営業していない。水をテーマとするアミューズメントパークであるから、冬はオフシーズンであることは想像がつくものの、それにしてもやる気が感じられない短い営業時間に興味をそそられ、訪問してみることにした。

IMG_0533開園時間の12時ちょうどに中に入ると、パーク内の異様な雰囲気に気づく。パーク全体の約半分の面積を占めるウォーターパーク部分(日本で言えば、ウォータースライダー等を備えた大型プール施設)が閉まっているのは、オフシーズンであるから仕方ないとしても、残り半分の水族館及び遊園地部分でも、ショップを中心に、3割くらいの施設が閉まっている。

ただ、もう少し良く観察してみるとそれも頷けるのが、このSea World、ほとんどのアトラクションやショーが「水に濡れる」ことを売り物に作られており、例えばこの「Journey to Atlantis」というアトラクションは、最上部から水の中に一気に落下し、乗客達はずぶ濡れになる。ただでさえ寒いのが苦手なアメリカ南部の人達が、わざわざ冬に水に濡れに来たがらないのも無理もないことではある。

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通常水族館にとって最大の呼び物である海の動物達によるショーも、同様にやる気がなく、それぞれのショーは一日に一回しか実施されない。しかも、それぞれのショーは時間が重ならない様に配慮されており、ショーが始まる前には、それぞれの会場の周りに訪問客達が、ゲルマン民族の大移動の様に一斉に移動する。

IMG_0135そのせいか海の動物達も気が立っており、アシカとセイウチ達のショーの後には、アシカに餌をあげられる様になっているのだが、アシカ達は一週間に数回しかないごちそうのチャンスを逃さない様に、我を争う様に餌に飛びついてくる。訪問客達に対して大声で吼え、餌を得るためには仲間を痛めつけようとするアシカ達の本能丸出しの姿には、動物と触れ合えるのを楽しみにしていたであろう子供達もひいていた。

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一方で見方を変えれば、6時間の営業時間の間に、営業中のアトラクションやショーの全てを楽しめる様に配慮されているとも考えられ、海の動物達と調教師たちとの息の合ったパフォーマンスは、アメリカらしく演出も工夫されていることもあり、満足度は高い。特に、Sea Worldでは「Shamu」と呼ばれるシャチ達によるショーは、光と水で彩られたシャチ達の勇姿が美しい。

IMG_0576というわけで個人的な満足度は決して低くはないのだが、やはり腑に落ちないのは、閉まっている施設が多くない中で入園料金がおそらくオンシーズンと同様の59ドルに設定されていることだ。しかもご丁寧に、ほとんど並んでいないアトラクションに並ばず乗れるという「Quick Queue」なる特別チケットも、15ドルで販売されている。

一週間に12時間しか営業しないのは、オフシーズンにおいても集客が見込める週末の午後に営業を集中するとの戦略だとは思う。しかし、閉まっている施設も多く、営業コストはオンシーズンよりも低いと推測されるので、料金設定を安くして平日も営業すれば、全体でより多くの収益が見込めるのではと邪推してしまうのは、僕がまだアメリカ南部を十分に理解していないということだろうか…。

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ハリケーンとF1アメリカGP

多くの日本の方々にとって、アメリカ南部に対するイメージの一つが「ハリケーンによる被害の多い地域」と言うものではないだろうか。アメリカ南部に上陸した2005年のハリケーン・カトリーナ、2008年のハリケーン・アイクの時には、僕自身はまだ日本にいたが、ハリケーンで壊滅的な被害を受けた街を映したニュース映像は今でも記憶に残っている。今回は、そうした過去の巨大ハリケーンを越える歴史上最強のハリケーン、「パトリシア」が最悪のタイミングで発生した。車好きのアメリカ人達が待ち望んでいたモータースポーツの頂点、F1アメリカGPのタイミングでである。今回は、F1アメリカGPの関係者達が、いかにこの悪天候に立ち向かったかを書いてみたい。

F1は通常、金から日の3日間を使って実施され、金曜と土曜の午前中に練習走行、土曜の午後に予選、そして日曜の午後に予選というスケジュールだ。しかし今回は、10月23日(金)の朝の時点で、歴史上最も強いハリケーン・パトリシアがメキシコの南の太平洋上に発生したことが全米のニュースを駆け巡り、ハリケーンの進行方向に位置するF1アメリカGPの開催地、テキサス州オースティンでも金曜午後には雨脚が強まり、同日午後の練習走行は悪天候のため中止になってしまった。

このままでは練習走行どころかグランプリ自体が中止になってしまうのではないかという懸念を抱きつつ、土曜の朝に僕は会場であるサーキット、Circuit of The Americasに向かう。予選が開始されるはずの時刻の午後一時ちょうどにサーキットに着いたが、F1名物の爆音が聞こえない。予選は悪天候のため30分延期になっており、周りに見えるのは、雨具を着て横殴りの雨に震える人々と、雨から逃げて唯一ある屋内のバーにごった返す人々だった。

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IMG_0463結局、雨は激しさを増すばかりで、合計3時間延期になった後、予選は翌日の朝9時に延期になってしまう。いよいよ中止の二文字が頭をよぎるが、一方で希望に感じられたのは、各種報道において、メキシコに上陸した最強のハリケーン・パトリシアは、予想に反してメキシコで一気に勢力を弱めて熱帯低気圧に変わり、日曜の午後にはオースティンでも天候が回復すると報じられていたことだ。

明けて日曜日。残念ながら雨は降り続いているが、天候が回復することを信じて9時から予選を決行することがアナウンスされる。最悪のコンディションの中、ドライバーもピットクルー達もずぶ濡れになりながらマシンを調整し、決して悪くないラップタイムをはじき出して行く。結果として、チームとしての年間チャンピオンを争っているメルセデスとフェラーリが予選の上位に並ぶのには、流石としか言い様がない。

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そして午後。ついに雨も上がり、人がまばらだった会場にも、続々とファン達が詰め掛けてくる。コース上では、バキュームカーで水の吸出しが行われ、少しでもコンディションを良くしようという関係者の必死の努力に頭が下がる。スタートが近づき、各チームのマシンがスターティンググリッドに並ぶと、そこはアメリカらしく、最前列には大きな星条旗が掲げられ、国歌が朗々と歌い上げられる。

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レース自体も悪天候に負けないくらいの白熱の混戦で、まずスタート時の最初のコーナーで、二番手でメルセデスのハミルトンが、ポールポジションでチームメイトのロズベルグを強引に抜き去る。その後、セーフティーカーが二回投入される波乱の展開の中、フェラーリ、レッドブルを含む上位陣による抜きつ抜かれつの攻防が続いたが、残り数週でハミルトンが、前を走るロズベルグの一瞬のミスを突いてトップに返り咲き、そのままアメリカGPでの優勝を手にするとともに、2015年の年間チャンピオンをも確定させた。

歴史上最強のハリケーン・パトリシアにより、多くの人々がグランプリの中止を覚悟した中、的確な状況判断で、サーキットの歴史に残ると思われる名レースを実現させた関係者の努力に改めて感謝したい。

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映画フォレスト・ガンプに見るアメリカ南部

Life is like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get. (人生はチョコレートの箱の様なものさ、開けてみるまで何が入っているかわからない。)

僕が最も好きなアメリカ映画の一つ、フォレスト・ガンプに出てくる名言の一つだ。フォレスト・ガンプと言えば、1960年台から70年台のアメリカを舞台に、人より知能が低いけれど誰よりも純粋で、周りの人達の人生に大きな影響を与えていく主人公フォレストをトム・ハンクスが演じ、1994年のアカデミー賞で多くの賞を総なめにした。そして、この映画の舞台の多くが僕の住むアメリカ南部だが、僕はこの映画には、ここアメリカ南部に住んでこそ実感できる多くの背景があると思っている。

例えば、主人公の名前であるフォレストは、アメリカ南部の白人至上主義団体であるクー・クラックス・クラン(通称KKK)の結成者であるネイサン・ベッドフォード・フォレスト将軍から来ている。また、フォレストが幼い頃、南部アラバマ州Greenbowにある彼の自宅には、南部ミシシッピ州に生まれ、同じく南部のテネシー州メンフィスに没した南部の英雄エルビス・プレスリーが泊まりに来ていたりする。しかし、アメリカ南部にとっての海、メキシコ湾に程近いところに住む僕にとっては、メキシコ湾の主な海産物の一つであるエビが果たす大きな役割が最も印象深い。

映画の中盤でベトナム戦争に従軍した主人公フォレストは、それまでの人生で唯一友達と呼べる存在である黒人のバッバと出会う。奴隷解放の後も南部では貧しい黒人が多く、バッバの母親は何世代にもわたって、白人のご主人様の召使として働いていた。しかし、バッバには大きな目標があった。彼はメキシコ湾で獲れるエビについては誰よりも詳しいという自信があり、ベトナム戦争への従軍が終わったら、兵役で貯めた資金を使ってエビ漁のためのボートを購入し、自分が船長になろうと考えていたのだ。心優しいフォレストはバッバがエビ漁船の船長になったら、自分がパートナーになると約束する。

バッバの目標は、実際には、不平等な社会における底辺で生まれた者が、苦しい現実と折り合っていくための非現実的な夢想で、実際には黒人が当時、エビ漁船の船長になるのは不可能に近かっただろう。しかしバッバは、その現実性を確かめることなく、北ベトナム軍の攻撃によって戦死してしまう。そしてここからが映画の見所の一つだが、ベトナム戦争を生き延びたフォレストはバッバとの約束を守り、従軍中に貯めた資金の全てを投げ打って、アラバマ州のバッバの故郷で、本当にエビ漁船を購入してしまうのだ。

フォレストのエビ漁船は初め、ほとんどエビを獲ることができず苦労する。しかし、ベトナム従軍時代からの仲間であるダン中尉の協力や、何より南部を襲った大型ハリケーンの影響で、他の漁船が大破したことでその地域で唯一の漁船となったことにより、面白い様にエビが獲れる様になっていく。通常の方法ではエビをさばき切れなくなったダン中尉とフォレストは、ビジネスパートナーである二人の名前を取ったエビ料理専門のレストランチェーン、Bubba Gump Shrimp Companyを大成功させ、彼らは億万長者となる。

このバッバ・ガンプは何と、映画にインスパイアされて1996年に実際にオープンし、今では世界中に40店舗を抱えるまでになっている。僕が住むテキサス州にはメキシコ湾沿いに2店舗があり、今回、フォレストとバッバのエビへの愛情を確かめるためにも訪問してみた。店内は映画の名シーンや名ゼリフの引用であふれている。

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料理ももちろんメキシコ湾で獲れたエビ尽くしだ。まずは、映画にも登場する、ゆでたエビをカクテルソースで食べるシンプルな料理、シュリンプ・カクテル。

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次は、シーフードや肉、野菜等を濃い目のソースでごった煮にした中にライスを加えた南部の代表料理、ガンボスープ。この料理には黒人奴隷達がアフリカから持ち込んだ野菜であるオクラが欠かせない。

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更にはパスタも、エビをガーリックバターで炒めたシュリンプ・スカンピのパスタしかない。一度の食事でここまでエビばかり食べたのは、人生でも今日だけかもしれない。

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2015年現在のレストランから見えるメキシコ湾。空にはカモメが気持ちよさそうに飛び、海上にはヨットやクルーザーを浮かべて週末を楽しむ南部の人々があふれていた。しかし、これだけのエビを消費するレストランには、大漁で上機嫌のダン中尉とフォレストのエビ漁船が、今にも現れそうな気がするのだ。これこそ、南部ならではのフォレスト・ガンプの味わい方ではないだろうか。IMG_0334

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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College Footballの熱狂

アメリカで人気のスポーツと言えば何だろうか?野球やバスケットボールも人気だが、ここ南部ではやはりアメリカンフットボールが最も人気だと思う。そして、南部の人々が、アメリカンフットボールのプロリーグ、NFLに負けず劣らず熱狂するのが、大学生達のフットボール、カレッジフットボールだ。IMG_0273 (6)

 

今回、同校の卒業生の知人に誘われて、南部の強豪校の一つTexas A&M University (テキサス農工大学)の今シーズン初ホームゲームを訪れた。Texas A&Mはアメリカ全土でも3番目に大きい大学で、アメリカ南部各地に卒業生が多い。同校の卒業生は自分達のことをAggie(「アギー」と発音する)と呼び、母校、特に母校のフットボールチームの熱狂的なファンであることで有名である。そんな大学が今年、フットボールスタジアムであるKyle Field Stadiumを大改築したものだから、新しいスタジアムのお披露目ともなるホームゲームはお祭り騒ぎとなった。IMG_0271

 

新しいスタジアムは何と10万人を収容でき、多くの在校生や卒業生、その知人達を迎え入れるため、当日は広いキャンパスの敷地内の大部分が駐車場となった。僕は試合の直前に到着したため、駐車場からスタジアムまでシャトルバスを利用しなければならない程だった。スタジアムの中も外も、Texas A&Mのカラーであるエンジ色のTシャツを身にまとい、すっかり興奮した人達で溢れている。

今回は知人の招待で、特別席であるスイートで観戦したのだが、スイートの中は周りの喧騒が嘘の様に、クーラーが効いた部屋で快適に観戦でき、各部屋に料理や飲み物を給仕するウェイターまでついている。ちなみに、スイートは大学への寄付の金額に応じて部屋のランクが分かれていて、最上級のスイートは最低2百万ドル(日本円で約2億5千万円)以上寄付しないと、確保できないそうだ。 IMG_0275

試合が始まると、スタジアムの興奮は最高潮に達する。全米でも数少ない上級軍事大学でもある大学の伝統として、在校生は試合中、常に立って応援しなければならない。その中でも、士官候補生の在校生達は一番前の特等席を割り当てられている。ハーフタイムにはそんな士官候補生の一部が一年中練習しているというマーチを披露してくれるのも、試合に負けず劣らず見物である。また、Texas A&Mがタッチダウンを決める度に、全米で唯一という本物の大砲の砲撃があるのも、校風を良く表している。

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IMG_0281試合自体は格下の大学が相手ということもあり、Texas A&Mの圧勝で終わった。しかし、今シーズンはまだ、同じく南部の強豪校であるMississippi州立大学や、Alabama州立大学との試合が、このKyle Field Stadiumで控えている。スイートに招待してくれた知人からは、また近いうちに招待するとの嬉しい申し出があった。今後もTexas A&Mのフットボールチームから目が離せなさそうだ。

 

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