テキサス流の巨大で多様な冬のイルミネーション

日本では各都市が冬のイルミネーションの美しさを競い合うシーズンが到来した。これまでここテキサス州ヒューストンではあまり有名なイルミネーションがなかったが、この冬、ヒューストンらしい、巨大かつ多様性に富んだイルミネーションが登場し、地元の人達を興奮の渦に包んでいるので紹介してみたい。

ヒューストンの主要環状高速道路であるSam Houston Toll Wayの北側を運転していると、それは突如として登場する。IMG_0795

Magical Winter Lightsと題されたこのイベントを訪れた者は、まずその巨大さに圧倒される。普段はヒューストン競馬場として使用されている場所を使っているだけあって、広大なスペースに巨大なイルミネーションが豪快に展示されている。IMG_0796

そして次に驚かされるのが、イルミネーションのテーマの多様性だ。ヒューストンの人種的民族的な多様性を象徴するかの様に、米州、ヨーロッパ、アジア、アフリカ等のエリアに分けられた会場内では、各エリアを代表する建物を模したイルミネーションが次々と登場する。ここでいくつか紹介してみよう。

まずはロシア・モスクワの聖ワシリイ大聖堂。IMG_0802

次は、中国。IMG_0805

細部は怪しいところもあるエジプト。IMG_0810

ラティーノの人達に人気だったメキシコのマヤ文明のピラミッド。IMG_0813

そしてもちろん、我らがヒューストン。IMG_0816

イベントの主催者であるYusi Anさんは、地元のオンラインメディアであるHouston Pressのインタビューに対して、このイベントにかける思いを語っている。

Anさんの家族はランタン祭りが盛んな中国四川省の出身で、過去5年間のアメリカでの生活を経て、ヒューストンの多様な人口構成と、冬でも比較的温暖な気候に出会い、世界中のランドマークをテーマにして中国のランタン祭りを再現しようと決意したという。世界のランドマークを再現したイベントは他にもあるだろうが、それぞれのランドマークに対して、それぞれの国・地域の出身の人々が自分達の文化を発見して、その美しさに感動できるのは、ヒューストンならではだ。

ただ、来年以降に期待したいことがあるとすれば、主催者の出身である中国のエリア等は完璧に作りこまれているが、一部の地域については、時間的に間に合わなかったのか、予算が足りなかったのか、少々適当になっているのが残念ではある。例えば南極のエリアでは、ボーリングのピンの様なペンギンが若干不気味だ。

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しかし、全体としては大満足なイルミネーションで、今回の時点で、地元の人達の心を鷲づかみにしていることは間違いない。来年以降、更に完成度を増して、全米レベルで有名なイベントに成長することを期待したい。

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テキサス州ヒューストンで黒人の新市長が誕生

現在、アメリカでは来年の大統領選挙に向けて、移民やイスラム教徒に関する問題発言にも関わらず、共和党のドナルド・トランプ候補による「トランプ旋風」が吹き荒れている。ブッシュ元大統領一族のお膝元でもあり、長年強固な共和党の地盤であるここテキサス州について言えば、共和党内の対抗馬で同じく保守的な発言の多いテッド・クルス候補も元気がいい。

しかし、テキサス州の中でも、僕の住むヒューストンは政治的にリベラルなことで知られている。例えば、ヒューストン市民から人気を集め、3期6年にわたって市長職を務めてきたアニス・パーカー現市長は、女性市長であるだけでなく、自らがレズビアンであり、同性のパートナーと養子の子供達がいることを公言している。

そうしたリベラルな政治風土は、ヒューストンが全米第四の巨大都市であること、そして、全米でも有数の人種的に多様な都市であることと無関係ではないだろう。2010年の国勢調査に従えば人口的に、ヒューストンの多数派はラティーノ(44%)であり、アングロサクソン系の白人(26%)や、黒人(25%)よりも圧倒的に多い。

そうした中、年末でパーカー現市長が任期の限度である3期を全うするため、彼女の後継者を選ぶ市長選が行われることとなった。ヒューストン外でも大きな注目を集めた市長選だったが、11月の第一回投票では結果が出ず、12月12日の決選投票にもつれ込む。決選投票に残った二人の候補者とは、実業家で保守派のビル・キング氏と、テキサス州の民主党下院議員を長年務めてきたベテラン政治家のシルベスター・ターナー氏だ。

決選投票前には、”BACK TO BASICS”をスローガンに掲げ、財政の緊縮や交通インフラの整備を公約に掲げたビル・キング氏の立看板がヒューストンの街中に溢れ、テレビのCMでも、キング氏が頻繁に登場した。対するターナー氏はメディアへの露出は少ないものの、支援者と地道な選挙キャンペーンを続けている様だった。IMG_0781

そして、決戦当日。混戦を暗示するかの様に大荒れの天気の中、夜遅くまで結果がわからない状態が続いたが、最終的にはターナー氏が4,100票差の僅差で勝利し、ヒューストンの歴史上、二番目の黒人市長に選ばれた。

地元の新聞Houston Chronicle電子版の12月13日付けの記事Voter mobilization, black turnout drive Turner win(有権者を投票所に行く様に仕向け、黒人の投票率が高かったことがターナーの勝利につながった)では、キング氏は、白人が多数を占める選挙区では71パーセントの得票をしたのに対し、ターナー氏が黒人が多数を占める選挙区で93パーセントの得票を獲得したのに加え、ラティーノの住民が多い二つの選挙区で多数を得たことが、ターナー氏の勝利につながったことを指摘している。

そうした支持層と結びつくかの様に、ターナー氏は選挙中、貧富の差の解消や、教育の機会均等を主張することで指示を集めていた。しかし、折からの石油産業の不況でそうした社会福祉の財源は必ずしも明確ではなく、実際、12月12日付けの別のHouston Chronicleの記事Turner defeats King to become Houston’s next mayor(ターナーがキングを破りヒューストンの次の市長に当選)では、ヒューストンでは来年、1.26億ドルもの財政赤字が予想されることが述べられ、敗北はしたものの、キング氏の方が具体的な財政再建プランを持っていたことを指摘している。

多様なヒューストンの住民をまとめ上げるには、ターナー氏の人種的なバックグラウンドや、州の下院議員としての長年の経験が有利に働くこともあるだろう。年明けの就任以降、新市長がどの程度具体的な施策を打ち出せるかに注目していきたい。(写真は夕暮れのヒューストン市庁舎)IMG_0783

 

 

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Forbesの調査でヒューストンが全米で最も実質収入の高い都市に

読者の皆様はアメリカで収入の高い都市と聞いてどこを思い浮かべるだろうか?世界の金融の中心ニューヨークだろうか?それとも、ITベンチャーが生まれ続けるシリコンバレーだろうか?

Forbesの11月19日付けの記事(The Cities Where Your Salary Will Stretch The Furthest 2015(2015年あなたの給料を最も活用できる都市)によると、Praxis Strategy Groupという調査機関がForbesのために実施した調査で、「実質収入」の高い都市として、東海岸でも西海岸でもなく、何とアメリカ南部の我らがヒューストンが第一位に選ばれたという。

まず、ランキングを見てみると、

第一位:テキサス州ヒューストン及びその郊外

第二位:カリフォルニア州シリコンバレー

第三位:ミシガン州デトロイト及びその郊外

第四位:コネティカット州ハートフォード及びその郊外

第五位:テキサス州ダラス及びその郊外

と、テキサス新幹線で結ばれる予定のテキサス州の二大都市、ヒューストンとダラスが第五位までにランクインしている。

こうした少々驚きのランキングになるのは、この調査の独特の調査手法による。この調査では、全米の53の主要都市を調査対象にして、平均年収を、不動産価格と物価の違いを総合した生活コストで調整しているのだ。

ヒューストンの主要産業といえば、航空宇宙や医療産業もあるものの、何といっても石油産業だ。原油価格が7年ぶりの安値をつけ、当地の石油関連産業にはリストラの嵐が吹き荒れている今、ヒューストンの年収が全米で最も高くなるとは考えにくい。実際、この調査でも第一位のヒューストンの平均年収が6.0万ドルなのに対して、第二位のシリコンバレーの平均年収は9.8万ドルだ。

一方で、生活コストが安いというのは確かに実感がある。まず、年収にはマイナスに働く原油価格も生活コストにはプラスだ。公共交通機関が貧弱なヒューストンでの交通手段と言えば自家用車が基本だが、石油産業の中心ではガソリン価格も安い。近所のエクソンモービルのガソリンスタンドでは、レギュラーガソリンで、1ガロン1.75ドルをつけていた。これは、日本の単位に直せば、1リットル56円となり、日本の平均ガソリン価格の半分以下だ。IMG_0771

また、Forbesの記事でも触れられているが、更に大きいのは住宅コストの安さだ。もちろん、ヒューストンでも中心部では住宅コストは比較的高くなるが、この調査では、ウッドランズやシュガーランドなどの主な郊外地域も含んでいる。郊外では、ダウンタウンで1ベッドルームのアパートに住む様な家賃で、一戸建てに住むことができる。写真は一般的な郊外の住宅街の町並みだ。

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そして、ガソリン価格の安さは、ヒューストンの住民にとって、郊外に住むという選択肢をより現実的にさせる。実際、ヒューストンはアメリカの主要都市の中でも、最も郊外に広がった都市として知られ、郊外地域も含めたヒューストン都市圏(グレーター・ヒューストン)としては、全米第4位の人口を誇る。

結果として、生活コストを調整後の実質収入は、第二位のシリコンバレーが5.6万ドルに対して、ヒューストンは6.2万ドルで第一位となる。

しかし、テキサス新幹線についての記事でも書いたが、こうしした状況も今後は変わってくるかもしれない。安い生活コストの影響もあり増え続ける人口は、交通渋滞の深刻な悪化を生んでおり、生活の質の向上を求めて、少々高い家賃を払っても、中心部に住みたがる人々も現れてきている。そうした新しいタイプのヒューストン住民が増えてくれば、レストランやスーパー等にしても、高級路線の店舗が出てくるだろう。

Forbesはこの調査を3年おきに実施しているが、変わりゆく都市ヒューストンが次回の調査でも第一位を保っているかが注目される。

 

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「銃持込み禁止」の看板を掲げ続けるヒューストン動物園

カリフォルニア州で12月2日に発生した銃乱射事件は、全米を大きな不安で包んでいる。

アメリカ南部と言えばアメリカの中でも有数の銃社会だ。普通の人々が当たり前の様に銃を所有し、ローカルニュースを見れば毎日の様に発砲事件が起きている。しかし、ここテキサス州ヒューストンには、銃団体からの抗議にも関わらず、自らのポリシーに従って、「銃持込み禁止」の看板を掲げ続ける動物園があった。

地元の新聞であるHouston Chronicle電子版の11月25日付けの記事Houston Zoo reinstates “no gun” signs despite controversy(ヒューストン動物園は論争にも関わらず「銃持込み禁止」の看板を元に戻した)に詳細が記載されている。

事の顛末としては、まず本年9月の時点で、ヒューストン動物園が「銃持込み禁止」の看板を掲げたところ、銃保持者のための法律事務所であるTexas Law Shieldの弁護士が動物園とその関係団体に対して、看板の撤去を求める要望書を送付し、動物園は一度は看板を撤去することになる。

しかし、動物園側も再度顧問弁護士と検討を重ねた結果、その根本において、「教育的施設(Educational Institution)」である動物園にとっては、銃の持込みを禁止する看板を掲げることは禁止されていないとの判断に至り、11月下旬の時点で再掲示を実施したのだと言う。動物園側によれば、テキサスの刑法では、学校や教育的施設への銃の持込みは禁止されているという。

日本人的な感覚からすれば、子供達が色々な動物に会えて楽しめる場である動物園に銃が馴染むとは思えず、そもそも上記の様な論争があること自体に違和感がある。しかし両当事者は大真面目であり、同じHouston Chronicle記事によると、銃保持者側の顧問弁護士は動物園側の措置に憤慨しており、テキサスの法律上、「教育的施設」とは、カリキュラムや学位を授与するシステムを有する施設に限定されるとして、近く動物園側に再度抗議をする予定だという。

動物園側が論争を続けてまで守ろうとしている価値が何なのか気になり、今回動物園を訪れてみた。

動物園の入り口に着くと、その右側の壁に、例の「銃持込み禁止」の看板が大きく掲げられている。

IMG_0734そして、自分たちが「教育的施設」であるという主張を裏付けようとするかの様に、園内ではいくつもの教育的なイベントが用意されている。例えば、30分おきに園内のどこかのエリアで、飼育員たちが自らが飼育する動物について語る場が用意されている。IMG_0739IMG_0766

それぞれの動物たちの住まいも、檻に囲まれているわけではなく、広いスペースを使って、できる限り自然に近い状態が再現されている。更に、「ADOPT」といって、気に入った動物の里親になれるプログラムも用意されており、子供たちは動物園を出た後も、継続的に動物の成長に関心を持てる様になっている。

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何より僕の心をひきつけたのは、動物達を間近に見て、また、実際に触れて、無邪気に喜ぶ子供達の笑顔だ。正式なカリキュラムはなくとも、一日動物園を訪れた後では、子供達はすっかり動物に詳しくなり、また、絶滅の危機に瀕している動物への思いやりを持つ様になるだろう。確かにそんな場に、銃の存在はふさわしくない。

アメリカにおいて銃規制反対派の人々はしばしば、アメリカ合衆国憲法修正第二条に基づき、個人が武装する不可侵の権利を主張して、銃規制に反対する。しかし、頻発する銃犯罪は何らかの規制が無くしては、社会の安定が揺らぎかねないことを示唆している。少なくとも、子供達が自然環境や動物達を含めて、次の時代のあり方を学び、考える場には、銃のない平和な空間が保たれてほしいものだと思う。

 

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テキサスの砂漠の中にあるプラダ-Prada Marfa-

現代社会、特にファッション業界では、最新の流行は常に再生産されている。毎年、その年に流行すべきデザインが大々的な宣伝によって、大衆心理の間に浸透し、そのブランドの最新の服を身に着けることで、共有された「今」を消費することができる。一方で、そんな最新の流行も一年も経てばすぐに時代遅れになり、店頭から撤去された商品はあたかも最初から存在しなかったかの様に消え去ってしまう。

しかし、ここテキサス州西部の砂漠地帯には、2005年のコレクションを永久に陳列するプラダが存在する。永遠の「今」を生きようとする現代の人々に、抗いがたい時間の流れを見せつけようとするかの様に。

テキサス州西部のメキシコとの国境に近い辺りは、どこまで行っても背の低い植物がまばらに点在するだけの砂漠地帯が広がる。しかし、高速道路であるI-10をVan Horn(バン・ホーン)で南に曲がり、ルート90を南に40マイル程進むと、突如として道端に回りの風景と全くそぐわないものが現れる。IMG_0722
IMG_0714一見変電所かトイレか何かだと思うのだが、掲げられている看板はどうみても世界的なファッションブランドのプラダである。いかに周りと比べて違和感があるかをご理解頂くために両側の風景もご覧頂きたい。IMG_0724IMG_0725

ご覧の通り、店の両側には50年前も変わらなかったであろう砂漠の風景が広がっている。しかも、店の中に目を向けると、確かにプラダのものと思われるバックや靴がところ狭しと並べられている。IMG_0716

しかし、すぐに違和感に気づく。まず、どこにも店員の姿がない。それに陳列されている商品もどことなく一昔前の物の様に見える。

 

実はこれ、北欧出身のアート集団であるElmgreen and Dragsetがプラダの公認を得て2005年に制作した「Prada Marfa」と呼ばれる現代アートなのだ。プラダの2005年コレクションを陳列した上で、一切の修復を施さず、次第に風化していくに任せることそれ自体が、現代の物質主義への批判を込めたアートとなっている。

しかし実際には、Prada Marfaの過去10年の道のりは、「次第に風化していく」といった様な穏やかなものではなかった。完成して6日後以降、中の商品はたびたび盗難に合い、落書きの被害も何度も発生している。製作者側としては、苦肉の策として、靴は片方だけ、バックは底を切り取って展示することとなる。(上の店内の写真をもう一度見て頂きたい。)更に、2013年には、テキサス交通局から、不法な道路上の広告物とみなされてしまう。

現代の物質主義への壮大な批判を行う前に、そうした物質主義に染まった個別の人々への対処が必要だったわけであるが、関係者達はこの息の長いプロジェクトを成功させようと粘り強い努力を行っており、2014年9月にはテキサス交通局とも、Prada MarfaをMuseumと識別することで合意する。(2014年9月12日のHouston Chronicle電子版の記事)

絶え間なく最新の流行が再生産、消費され、廃棄される現代社会。50年後の未来に、21世紀初頭の「今」を思い起こさせるものがどの程度残されているだろうか。このPrada Marfaがゆるやかな風化を経て、「今」、そして「今」からの時間の経過を伝えるアートとなっていることを願いたい。

※なお、実際に訪問する場合、Prada MarfaはMarfaという名前がついてはいるが、実際のMarfaの町はそこから更に南東に40マイル程行った場所にあり、このアート作品はValentineという町に位置していることに注意して頂きたい。

 

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ホワイトサンズ国定公園の一年間に6回しか開催されないガイドツアー

観光旅行における強い味方と言えば、地元の観光ガイドだ。限られた時間の中で、その土地の魅力を堪能するには、観光スポットを毎日の様に巡っている地元のガイドの深い知識と経験が頼りになる。しかし、アメリカはニューメキシコ州の南部にあるホワイトサンズ国定公園には、一年の間に6回しか開催されないLake Lucero(ルセーロ湖)ツアーという一風変わったツアーが存在する。今回、そのツアーに参加してみたので、ここでレポートしたい。

ホワイトサンズ国定公園は、琵琶湖より一回り大きい面積に広がる巨大な砂丘地帯に位置する。ルセーロ湖ツアーに参加するには、アメリカ国立公園局の公式サイトから申し込む以外になく、指定フォームに記入した後、Eメールで送付すると、数日後に参加可否が返信されてくる。一年のうち、1-4月、11月、12月の月1回ずつ、計6回しか開催されず、所要時間は3時間で、現地集合、現地解散だ。

その現地集合場所と言うのがまた面白く、何と米軍が保有するミサイル射撃場のゲートの前に車に乗って集合する。それもそのはず、砂丘地帯のうち、国立公園なのは4割ほどで、残りの6割は全米でも最大規模のミサイル射撃場として使われているのだ。
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ゲートの前でレンジャーに名前を告げた後、定刻になると、参加者の車は一列になって米軍施設の中を通り抜けていく。トレイルの入り口まで30分程度は運転し、両側の光景は非常に興味深いが、残念ながら写真撮影は厳禁とのことだった。

トレイルの入り口に着くと、参加者は車から降り、レンジャーの後ろに付いて、砂漠の中の道なき道を歩いていく。この日は曇りの気候でむしろ肌寒いくらいだったが、好天時は冬でも30度を越えることもあると言う過酷なトレイルだ。

IMG_0669歩き出して30分程で、ルセーロ湖という湖の湖岸に着く。湖といっても、砂漠地帯だけあってほとんど水はないが、その代わりに周りにガラスの破片の様なものが散らばっている。IMG_0680 (2)

このガラスの様に見えるものの正体は医療用ギプス等にも使われる石膏だ。その成り立ちとしては、まず、およそ2億5年前に海底であったこの一帯にプランクトンの死骸が溜まって石膏を含んだ地層となる。その後、地層の隆起や雨による地層からの石膏分の溶け出しを経て、最終的に現在のルセーロ湖の辺りに溜まった石膏分を含んだ水分から、ゆっくりと水分が蒸発し、Selenite(透明石膏)と呼ばれる結晶になったのだ。近くで見てみると、確かに結晶である。

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だが、ここで話が終わっていれば、わざわざ年に6回のガイドツアーが開催されるまでもないのであり、ミサイル射撃場に戻った参加者達にレンジャー達は、ここで得た知識を元にぜひ北東のホワイトサンズ国定公園を訪れる様に促す。そこには、この地域特有の強風で少しずつ石膏結晶の破片が飛ばされ、巨大な砂丘地帯を形成しているという。

しかし、もとはといえば、小さな石膏の結晶なのだから、そこまでの大きさではないだろうと思っていた僕は、ホワイトサンズ国定公園の内部に入って息を呑む。IMG_0698IMG_0701

そこには360度どこを向いても、見渡す限りの白い砂の砂漠が広がっていた。その砂は、とても美しい白色をしていて、折りしも当日は曇り空で空までもが白いため、どこまでが空でどこまでが砂漠なのかわからなくなる程だ。

IMG_0709コンパスを頼りに砂漠の中を歩いてみると、ルセーロ湖に溜まった石膏から、気の遠くなる様な時間をかけて、少しずつの自然の働きでこうした美しい光景ができたのだという事実に、ひしひしと感動を覚えてくる。最初から砂丘を訪れていたら、砂丘の美しさに魅了されこそすれ、ここまでの心の動きはなかったかもしれない。

年に6回しか開催されず、スケジュールを合わせるのが難しいとは思われるが、ニューメキシコ州のホワイトサンズ国定公園を訪れる方は、うまく都合がつけば、是非ともルセーロ湖ツアーに参加して頂きたい。

 

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テキサス新幹線のある未来

日本の各種報道(官民ファンド、テキサス新幹線に出資へ 米国発を後押し)によると、我らがヒューストンとダラスを結ぶテキサス新幹線の実現に向けた日本側の取り組みが盛り上がっている。今回は、地元テキサスに住む者としての視点から、テキサス現地での報道や、実際の交通事情をまとめ、テキサス新幹線のある未来を考えてみたい。

まず、テキサス新幹線はどこを通る予定なのだろうか。地元紙の一つHouston Chronicle電子版の8月26日の記事(Feds approve Texas high speed rail corridor(テキサスの高速鉄道のルートについての連邦当局の承認)によると、環境評価を実施中の連邦当局は、4つあったルートの候補のうち、”Utility Corridor”と呼ばれるルートに候補を絞った模様だ。このルートは、そのルートの70%において、高電圧の電線に沿っていることで、電力の確保が容易になるのと、ヒューストンとダラスをほぼ直線的に結ぶことで、カーブによる新幹線の減速が抑えられるのが特徴だという。これで、テキサス新幹線の事業主体Texas Central Partnersが掲げる、「ヒューストンとダラスを1時間半で結ぶ」という目標も現実的になってくる。

では次に、ヒューストンとダラスを一時間半で結ぶというのは、既存の交通手段と比べて、どういったメリットがあるのだろうか。現在、ヒューストンからダラスに行くには、自家用車か飛行機を使うことになる。

まず、自家用車で行く場合、ヒューストンのダウンタウンからダラスのダウンタウンまでは、高速道路のI-45に沿ってひたすら進み、渋滞がないと仮定して、4時間程度かかる。一歩ヒューストンを離れると、ひたすら牧草地が両側に広がり、眠気と戦わなければいけない道ではあるが、大型の車を好み、長時間運転が苦にならないテキサスの人達にとっては、十分日帰りで往復できる距離で、実際著者も、テキサスに来てからの3年間で、合計8時間の運転には慣れてしまった。

但し、同じくHouston Chronicle電子版の7月23日の記事(Texas high speed rail passes major milestone with first fundraising announcement(テキサス高速鉄道は最初の資金調達の発表によって大きな一歩を踏んだ)によると、Texas Department of Transportation(テキサス運輸局)は、ヒューストンとダラスの両都市で急増する人口によって、2050年には同じ距離を運転するのに6時間かかる様になると予測しているという。確かに僕がヒューストンに来てからの3年間でも、人口増による渋滞の悪化は激しく、空いている時には30分で行ける距離が、ラッシュ時には一時間以上もかかることもある。6時間の距離が1時間半で行けるとなると、ヒューストン新幹線の意義も高まってくるだろう。

一方、もう一つの交通手段が飛行機だ。両都市間では、地元テキサスのLCCであるサウスウエスト航空が、1時間に1便(朝夕のピーク時には30分に1便)を飛ばしている。フライト時間はちょうど1時間で、渋滞と住んでいる場所にもよるが、空港までの移動時間は車で30分、また、フライトの1時間半前には空港に着く必要があるとして、ヒューストンの自宅を出て約3時間後にはダラスの空港に到着することができる。但し、ヒューストンもダラスも主要企業のオフィスはダウンタウンだけにあるわけではなく、町中に散らばっているので、どちらかの都市に着いた後は、結局タクシーかレンタカーを利用しなければならない。また、アメリカ人には空港のセキュリティーの煩雑さを嫌がる人も多く、やはり現時点で最もメジャーな交通手段は車と言えるだろう。

とこう書くと、仮にテキサス新幹線が実現しても、車への乗り換えの必要性は飛行機と変わらず、メリットが限定的にも思える。僕としては次に、テキサス新幹線がもたらしうる「新たな生活モデル」に注目してみたい。

伝統的に、テキサスで理想とされる生活スタイルは、郊外にプール付き庭付きの一戸建てを持ち、広大な土地に広がったオフィスや工場まで、大型のピックアップトラックに乗り込んで通うというものだ。それは、伝統的なテキサスの主要産業が、牧畜業や石油産業であることにも関連しているだろう。しかし、ヒューストンでは近年、医療産業など新しい産業の拡大にも力を入れている。そして、高度な医療の専門知識を有する人材は、自分の働く場所を選ぶ際に、「生活の質(Quality of Life)」を重視する。人によっては、公共交通機関が発達した東海岸とテキサスを比べた際に、長距離運転の必要性がマイナス要因になることもあるだろう。

実際にヒューストンでも、そうした新しい発想を持つ人材のニーズも見越して、2004年からダウンタウンの一部で、路面電車の運行を始めている。今回、テキサス新幹線の意義を考える意味でも、初めてこの路面電車を利用してみた。

路面電車の駅は無人駅となっており、利用者はチケット販売機でチケットを購入するか、Qカードと呼ばれるプリペイドカードを専用の機械にタッチすることになる。チケットはどこまで乗っても、一律で1.25ドルだ。

IMG_0600駅内に時刻表等はないが、路面電車を運行するMETRO社のHPによると、ダウンタウンを南北に結ぶRed Lineと呼ばれる主要路線については、平日の日中は6分おきに運行されている様だ。実際に5分くらい駅で待っていると路面電車が到着し、正面から見たその姿は案外かわいらしい。

IMG_0605車両が新しいこともあるが、車内は清潔に保たれており、スピードが遅いこともあるが、運行中も振動もほとんどなく、乗車中は快適だ。乗客達もマナーを守って静かに乗っており、感覚としては、日本の路面電車を利用するのと変わらない。こうした路面電車がテキサス新幹線に接続すれば、一切車を使わずに両都市間を往復することも可能になる。

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ということで、今後テキサスへの移住を考えている高度な専門技術を有する人材にとっては、ヒューストンとダラスのダウンタウン、そしてテキサスの二大産業都市である両都市間に、将来的に鉄道網が整備されることは、東海岸に近い質の高い生活ができることを意味する。乗客達は、移動中の数時間、運転の場合と違って、仕事をしたり読書にふけることも可能だ。テキサス新幹線の成功においては、いかにこうした人々のニーズを満たせるかが重要になってくるだろう。

もちろん、プロジェクトの成功においては、一般のテキサスの人々からの支援を得られることも同様に重要だ。地元テキサスのオンラインメディアであるThe Texas Tribuneの9月8日付けの記事(Texas Bullet Train Moving Forward Despite Obstacles(テキサス新幹線はいくつかの障害にも関わらず進んでいる)は、大都市間を結ぶ予定のテキサス新幹線が、都市部以外の沿線のほとんどの住民にとっては利用するメリットが出ないことを指摘している。沿線のコミュニティーの行政関係者には、牧畜業や地元の交通への悪影響を懸念して、プロジェクトに反対するものが多いとのことで、一部の住人は、最終的には強制的な土地収用に至ることも懸念している。

但し同じ記事では、50年にわたって死亡者・怪我人ゼロだった新幹線の安全性が、今後の議論で重要な論点になるとも指摘している。僕としては、大きな武器である安全性に対する信頼に加えて、プロジェクトが「テキサス新幹線のある未来」として、どういった生活モデルを描けるかに今後とも注目していきたい。

 

 

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日曜日が休みのファーストフード店

静岡の田舎に生まれた僕にとって、ファーストフードというのは一つのご馳走だった。僕が小学生だった1990年代前半、マクドナルドにしても、実家から車で30分程度かかる静岡駅周辺の繁華街にしかなく、週末の日曜日に映画館で映画を見た後にマクドナルドに寄ったりすると、とても贅沢をしている気分になったものだった。

今、ここアメリカ南部では車で5分走れば必ず何かのファーストフード店が見つかると言っていい程、ハンバーガー等のファーストフード店が多い。しかし一方でここには、僕の思い出の中でファーストフードと結びついている週末の日曜日に休みになる、一風変わったファーストフード店が存在する。それが、チキンサンドイッチに特化したファーストフード店Chick-Fil-A(チックフィレイ)だ。

IMG_0578IMG_0579チックフィレイは、1946年に南部ジョージア州のアトランタで、トルエット・キャシーがオープンしたレストラン、ドワーフ・グリルがその始まりで、チックフィレイ自体は1967年にアトランタのショッピングモール内に一号店がオープンし、その後もアメリカ南部のショッピングモールを中心に店舗を広げ、現在では、アメリカ全部で1,900店舗以上を営業している。

もともとチックフィレイが日曜日を休みとすると決めたのは、創業者のトルエット・キャシーが、アメリカにおけるプロテスタントの主要教派の一つ、南部バプテスト連盟の熱心な信者だったからと言われているが、個人営業のレストランならともかく、全米規模の巨大ファーストフードチェーンになった今も、全店にその方針を徹底するのは興味深い。

もう少し彼の考え方に迫ってみようと同社のホームページを見ると、日曜日が休みである理由について、こんな説明がなされている。

一週間に12時間しか営業しない水族館

日本でも、一週間に数日、数時間ずつしか営業しないラーメン屋や料亭など、店主の極度のこだわりが感じられる名店というのは存在する。たいていそうした店は、訪れるのが困難な分、大きな充実感が得られるものだ。しかし、ここアメリカ南部には、一週間で週末だけ、6時間ずつしか営業しない水族館が存在した。

それがこのSea World San Antonioだ。テキサス州が誇る内陸部の観光都市、サンアントニオに位置するこの水族館、ホームページを見ても、11月は第四週、12月は第三週と第四週を除いて、週末の、しかも午後の6時間ずつしか営業していない。水をテーマとするアミューズメントパークであるから、冬はオフシーズンであることは想像がつくものの、それにしてもやる気が感じられない短い営業時間に興味をそそられ、訪問してみることにした。

IMG_0533開園時間の12時ちょうどに中に入ると、パーク内の異様な雰囲気に気づく。パーク全体の約半分の面積を占めるウォーターパーク部分(日本で言えば、ウォータースライダー等を備えた大型プール施設)が閉まっているのは、オフシーズンであるから仕方ないとしても、残り半分の水族館及び遊園地部分でも、ショップを中心に、3割くらいの施設が閉まっている。

ただ、もう少し良く観察してみるとそれも頷けるのが、このSea World、ほとんどのアトラクションやショーが「水に濡れる」ことを売り物に作られており、例えばこの「Journey to Atlantis」というアトラクションは、最上部から水の中に一気に落下し、乗客達はずぶ濡れになる。ただでさえ寒いのが苦手なアメリカ南部の人達が、わざわざ冬に水に濡れに来たがらないのも無理もないことではある。

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通常水族館にとって最大の呼び物である海の動物達によるショーも、同様にやる気がなく、それぞれのショーは一日に一回しか実施されない。しかも、それぞれのショーは時間が重ならない様に配慮されており、ショーが始まる前には、それぞれの会場の周りに訪問客達が、ゲルマン民族の大移動の様に一斉に移動する。

IMG_0135そのせいか海の動物達も気が立っており、アシカとセイウチ達のショーの後には、アシカに餌をあげられる様になっているのだが、アシカ達は一週間に数回しかないごちそうのチャンスを逃さない様に、我を争う様に餌に飛びついてくる。訪問客達に対して大声で吼え、餌を得るためには仲間を痛めつけようとするアシカ達の本能丸出しの姿には、動物と触れ合えるのを楽しみにしていたであろう子供達もひいていた。

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一方で見方を変えれば、6時間の営業時間の間に、営業中のアトラクションやショーの全てを楽しめる様に配慮されているとも考えられ、海の動物達と調教師たちとの息の合ったパフォーマンスは、アメリカらしく演出も工夫されていることもあり、満足度は高い。特に、Sea Worldでは「Shamu」と呼ばれるシャチ達によるショーは、光と水で彩られたシャチ達の勇姿が美しい。

IMG_0576というわけで個人的な満足度は決して低くはないのだが、やはり腑に落ちないのは、閉まっている施設が多くない中で入園料金がおそらくオンシーズンと同様の59ドルに設定されていることだ。しかもご丁寧に、ほとんど並んでいないアトラクションに並ばず乗れるという「Quick Queue」なる特別チケットも、15ドルで販売されている。

一週間に12時間しか営業しないのは、オフシーズンにおいても集客が見込める週末の午後に営業を集中するとの戦略だとは思う。しかし、閉まっている施設も多く、営業コストはオンシーズンよりも低いと推測されるので、料金設定を安くして平日も営業すれば、全体でより多くの収益が見込めるのではと邪推してしまうのは、僕がまだアメリカ南部を十分に理解していないということだろうか…。

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ハリケーンとF1アメリカGP

多くの日本の方々にとって、アメリカ南部に対するイメージの一つが「ハリケーンによる被害の多い地域」と言うものではないだろうか。アメリカ南部に上陸した2005年のハリケーン・カトリーナ、2008年のハリケーン・アイクの時には、僕自身はまだ日本にいたが、ハリケーンで壊滅的な被害を受けた街を映したニュース映像は今でも記憶に残っている。今回は、そうした過去の巨大ハリケーンを越える歴史上最強のハリケーン、「パトリシア」が最悪のタイミングで発生した。車好きのアメリカ人達が待ち望んでいたモータースポーツの頂点、F1アメリカGPのタイミングでである。今回は、F1アメリカGPの関係者達が、いかにこの悪天候に立ち向かったかを書いてみたい。

F1は通常、金から日の3日間を使って実施され、金曜と土曜の午前中に練習走行、土曜の午後に予選、そして日曜の午後に予選というスケジュールだ。しかし今回は、10月23日(金)の朝の時点で、歴史上最も強いハリケーン・パトリシアがメキシコの南の太平洋上に発生したことが全米のニュースを駆け巡り、ハリケーンの進行方向に位置するF1アメリカGPの開催地、テキサス州オースティンでも金曜午後には雨脚が強まり、同日午後の練習走行は悪天候のため中止になってしまった。

このままでは練習走行どころかグランプリ自体が中止になってしまうのではないかという懸念を抱きつつ、土曜の朝に僕は会場であるサーキット、Circuit of The Americasに向かう。予選が開始されるはずの時刻の午後一時ちょうどにサーキットに着いたが、F1名物の爆音が聞こえない。予選は悪天候のため30分延期になっており、周りに見えるのは、雨具を着て横殴りの雨に震える人々と、雨から逃げて唯一ある屋内のバーにごった返す人々だった。

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IMG_0463結局、雨は激しさを増すばかりで、合計3時間延期になった後、予選は翌日の朝9時に延期になってしまう。いよいよ中止の二文字が頭をよぎるが、一方で希望に感じられたのは、各種報道において、メキシコに上陸した最強のハリケーン・パトリシアは、予想に反してメキシコで一気に勢力を弱めて熱帯低気圧に変わり、日曜の午後にはオースティンでも天候が回復すると報じられていたことだ。

明けて日曜日。残念ながら雨は降り続いているが、天候が回復することを信じて9時から予選を決行することがアナウンスされる。最悪のコンディションの中、ドライバーもピットクルー達もずぶ濡れになりながらマシンを調整し、決して悪くないラップタイムをはじき出して行く。結果として、チームとしての年間チャンピオンを争っているメルセデスとフェラーリが予選の上位に並ぶのには、流石としか言い様がない。

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そして午後。ついに雨も上がり、人がまばらだった会場にも、続々とファン達が詰め掛けてくる。コース上では、バキュームカーで水の吸出しが行われ、少しでもコンディションを良くしようという関係者の必死の努力に頭が下がる。スタートが近づき、各チームのマシンがスターティンググリッドに並ぶと、そこはアメリカらしく、最前列には大きな星条旗が掲げられ、国歌が朗々と歌い上げられる。

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レース自体も悪天候に負けないくらいの白熱の混戦で、まずスタート時の最初のコーナーで、二番手でメルセデスのハミルトンが、ポールポジションでチームメイトのロズベルグを強引に抜き去る。その後、セーフティーカーが二回投入される波乱の展開の中、フェラーリ、レッドブルを含む上位陣による抜きつ抜かれつの攻防が続いたが、残り数週でハミルトンが、前を走るロズベルグの一瞬のミスを突いてトップに返り咲き、そのままアメリカGPでの優勝を手にするとともに、2015年の年間チャンピオンをも確定させた。

歴史上最強のハリケーン・パトリシアにより、多くの人々がグランプリの中止を覚悟した中、的確な状況判断で、サーキットの歴史に残ると思われる名レースを実現させた関係者の努力に改めて感謝したい。

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