今、テキサス州ではガソリンの値段はXXXよりも安い!?

原油価格の下落が止まらない。1月7日、ニューヨーク先物市場で、米国産原油の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は時間外取引で一時、1バレル32.1ドルと2003年12月以来およそ12年ぶりの安値を記録した。(WTI原油が12年ぶり安値 時間外で一時32.1ドル)背景には、アメリカや中東などの主要産油国が減産を見送り、過酷なシェア争いを続けているのと、中国等での需要の減退があることは各種報道の通りだ。

その結果、原油から精製されるガソリンの価格も下落を続け、特に世界最大の石油化学プラント地帯を抱えるここテキサス州では、レギュラーガソリンの価格は1ガロン(約3.79リットル)=1.6ドルの驚異的なレベルまで落ちている。日本の単位に直せば、1リットル=約50円になる計算で、日本の半分以下である。(ガソリンの安さがヒューストンの生活コストにどう影響しているかは、Forbesの調査でヒューストンが全米で最も実質収入が高い都市にでも紹介した。)

我らがテキサス州ヒューストンの地元新聞であるHouston Chronicle電子版の12月23日付けの記事11 things that cost more than a gallon of gas (1ガロンのガソリンよりも高い11の物)が、ガソリンと身近な液体の1ガロン当たりの価格を比べることで、ガソリン価格がいかに安いかを表現している。今回、その記事の時点から更に進んで、原油価格が12年ぶりの安値に達したのに際し、当ブログでも改めて検証してみたい。

検証の場所に選んだのは、テキサス州サンアントニオが本社で、テキサス州全土に多数の店舗を抱えるスーパー、H-E-Bだ。IMG_1191

ここを検証の場所に選んだのは、テキサスの人々にとって最も身近なスーパーの一つであることもあるが、それ以外にこのスーパーは、同じ敷地内に自らのブランドのガソリンスタンドを運営しており、同じ企業の価格設定として、公平な比較がしやすいことがある。

まず、基準として、このH-E-Bでのレギュラーガソリンの価格は1ガロン=1.61ドルとなっている。これとH-E-Bの他の商品を比較してみよう。IMG_1190

最初に登場するのは、同じ油であるキャノーラ油。IMG_1177

96液量オンスで7.59ドルなので、1ガロン当たり5.69ドルだ。ガソリンよりも3.5倍高い。但し、これについては、地下から大規模に油を生産するよりも、植物から採取した方がコストが高そうなのは、感覚的にもしっくりくる。

次に登場するのは、テキサスの人々にとって最も身近な液体の一つ、地元テキサスのビールであるShiner Bock。IMG_1172

12液量オンス入りの瓶が6本で9.10ドルなので、1ガロン当たりに直せば、1ガロン当たり5.10ドルだ。ガソリンよりも3.2倍高い。アルコール度数の高い酒は火をつければ燃えるというが、普通にガソリンを燃やした方がよっぽど経済的というわけだ。

ガソリンよりも安い液体はないのかという不安が出てきたところで次に登場するのは、テキサスの田舎のどこにでもいる牛から採れた牛乳だ。IMG_1179

128液量オンス=1ガロン当たり、1.99ドルである。かなり近づいてきたが、ガソリンよりは1.24倍高い。自動車の様な複雑な機械を動かすガソリンが牛乳よりも安いというのは、よくよく考えてみると怖い気もする。

いよいよガソリンよりも安い液体はないとあきらめかけてきたところで、遂にガソリンよりも安い液体を発見した。IMG_1174

そう、水である。テキサス州で飲料水として人気のブランドの一つ、Ozarkaは1ガロン当たり1.29ドルで、ガソリンの80%の価格だ。それにしても、探査、掘削、生産、精製、輸送と様々な過程を経てガソリンスタンドに届けられるガソリンに比べて、地下から比較的容易にくみ上げられる水が八割の値段というのは、割りに合わない様に感じられる。

石油ガス産業は、ここヒューストンの最大の産業だ。万が一ガソリンが水よりも安くなる時が来たら、当地の石油ガス産業はいよいよ壊滅的な打撃を受けるだろう。未だ原油価格回復の兆しは見えないが、底を打つのはそう遠くない将来だということを信じて、この記事を終えたい。

 

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銃を見せながら食事したら25%引!? テキサス州で商業施設での銃のOpen Carryが合法化

ワシントンではオバマ大統領が涙ながらに銃規制の強化を訴えている状況下、ここテキサス州では1月1日より商業施設での銃のOpen Carryが合法となり、地元のレストランやスーパーが対応に追われている。レストランで食事をしていたら後ろの客が腰に銃を下げていた、という状況に心の準備をするためにも、ここでまとめてみたい。

Texas Department of Public Safetyのウェブサイトが、1月1日から施行された法律、House Bill 910について解説している。それによると、銃を隠して携帯する免許(Concealed Handgun License(CHL)の保有者は今後、一定の例外を除いて、周りに見える形で(Openly)、銃を肩か腰に下げて携帯することが許されるという。

一定の例外の一つは、高等教育施設で、「銃持込み禁止」の看板を掲げ続けるヒューストン動物園の取り組みを以前紹介した。

また、レストランやスーパーなどの商業施設については、自身の施設内に銃のOpen Carryを認めるかは各経営者の判断に任されており、銃のOpen Carryを禁止したい経営者は、”30.07 sign”と呼ばれる看板を店の入り口に掲げなければならない。これまでのところ各経営者の判断は様々だ。

我らがヒューストンから北西の郊外に位置するサイプレスにあるバーベキューのレストラン、Brooks Placeは、法律の施行日である1月1日に、銃をOpen Carryして来店した客に対して、25%の割引を実施することを発表し、地元の各メディアの注目を集めた。地元ヒューストンの新聞Houston Chronicle電子版の1月3日付の記事Opening weekend of open carry quiet(Open Carryの最初の週末は静か)によると、新しい法律の強固な支持者であるオーナーのトレント・ブルックス氏は、その日、45人が実際に割引を獲得したことを喜び、同紙のインタビューに対して、次の様に語っている。

“I support the Second Amendment,” … “It creates a safer environment for someone dining here – if there was ever someone trying to rob us – or rob our patrons, they’d walk in here, see people with guns. That should be a deterrent.”

(私は(個人が武装する権利を規定した)アメリカ合衆国憲法修正第二条を支持する。(Open Carryは)、ここで食事をする人々に対して、より安全な環境を作りだすんだ。もし、誰かが私達や、うちの常連に対して強盗を働こうとしても、ここに入った瞬間、銃を持った人々を見ることになる。これは抑止力になるんだ。)

このレストランは、決してオバマ大統領が敵視している例の過激な銃ロビイスト団体が経営しているレストラン等ではなく、テキサス州のおいしいバーベキューのリストに入ったこともある、バーベキューの人気店である。実際、オーナーのコメントは、銃所持に肯定的なテキサスの普通の人々の感覚から、そこまで遠くはないと思う。

一方、テキサス州の港湾都市、コーパスクリスティーで誕生し、テキサス州を中心にアメリカの10の州で展開するハンバーガーチェーン、Whataburgerは、既にOpen Carryが合法となっている他の州でも、Open Carryを認めない方針で知られており、今回のテキサス州のケースでもいち早く立場を明確にした。IMG_1167

同社は法律が可決された直後の昨年7月の時点で、自社のホームページで、社長兼CEOであるプレストン・アトキンソン氏の名前で、銃のOpen Carryに関するプレスリリースを発表している。一部を引用すると、

Whataburger supports customers’ Second Amendment rights and we respect your group’s position, but we haven’t allowed the open carry of firearms in our restaurants for a long time. It’s a business decision we made a long time ago and have stood by, and I think it’s important you know why. (…) We’ve had many customers and employees tell us they’re uncomfortable being around someone with a visible firearm who is not a member of law enforcement, and as a business, we have to listen and value that feedback in the same way we value yours.

(Whataburgerは、憲法修正第二条を支持し、(銃を支持する)あなた方の団体の立場も尊重しています。しかし、私達は長い間、自分達のレストランで、銃火器のOpen Carryを認めてきませんでした。これは、私達がかなり前に実施し、守ってきたビジネス上の決断であり、私はあなた方にその理由を知ってもらうことが重要と考えています。(…中略…)私達は、警官でもないのに、目に見える形で銃火器を所持している人間が回りにいることは不安だと語る、多くの顧客や従業員を抱えています。ビジネスとして、私たちはあなた方を尊重するのと同じやり方で、こうした反応に耳を傾け、尊重しなければならないのです。)

目に見える形で銃を保持した人が近くで食事していることを安心と感じるかどうかについて、全く正反対の考え方が存在するというわけだ。日本人の感覚には、Whataburgerの考え方の方が馴染みやすい。写真は、経営者が大切にしているWhataburgerの店内の雰囲気である。IMG_1170

しかし、気になることがある。上記の写真を撮りにWhataburgerを訪問したところ、経営者の力強い言葉にも関わらず、銃のOpen Carryを禁止するのに必要な”30.07 Sign”がどこにも見当たらない。さらに、この記事を書くに当たり、いくつかのレストランやスーパーを訪問したが、どこにも”30.07 Sign”は見当たらなかった。

これは、”30.07 Sign”が持つ強すぎる効果によるのかもしれない。テキサス州の歴史ある月刊誌Texas Monthly電子版は、1月5日付のHow Open Carry Forced Businesses in Texas To Take A Side In The Cultural War(Open Carryはテキサスの商業施設に対して、文化戦争のどちらか一方の側に立つ様に強いている)と題する記事で、Open Carry支持にしても、反対にしても、立場を明確にした商業施設は、反対の立場の側から、ソーシャルメディア等を通じて反発を受けていることを指摘している。少しでも多くの集客を見込むためには、当面の間、目立つ看板を掲げず、立場をあいまいにすべきなのかもしれない。

今後、Open Carryの合法化に起因する事件が起きないことを切に願っているが、何かが起きた時、いよいよ各レストランやスーパーは決断を迫られることになるだろう。

<2016年1月12日追記>

遂に銃のOpen Carryを禁止する”30.07 Sign”を入り口に掲げているレストランを発見しました。以前テキサス州のこだわりハンバーガーとして紹介したFuddruckersです。この”30.07 Sign”が広がるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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テキサス流の巨大で多様な冬のイルミネーション

日本では各都市が冬のイルミネーションの美しさを競い合うシーズンが到来した。これまでここテキサス州ヒューストンではあまり有名なイルミネーションがなかったが、この冬、ヒューストンらしい、巨大かつ多様性に富んだイルミネーションが登場し、地元の人達を興奮の渦に包んでいるので紹介してみたい。

ヒューストンの主要環状高速道路であるSam Houston Toll Wayの北側を運転していると、それは突如として登場する。IMG_0795

Magical Winter Lightsと題されたこのイベントを訪れた者は、まずその巨大さに圧倒される。普段はヒューストン競馬場として使用されている場所を使っているだけあって、広大なスペースに巨大なイルミネーションが豪快に展示されている。IMG_0796

そして次に驚かされるのが、イルミネーションのテーマの多様性だ。ヒューストンの人種的民族的な多様性を象徴するかの様に、米州、ヨーロッパ、アジア、アフリカ等のエリアに分けられた会場内では、各エリアを代表する建物を模したイルミネーションが次々と登場する。ここでいくつか紹介してみよう。

まずはロシア・モスクワの聖ワシリイ大聖堂。IMG_0802

次は、中国。IMG_0805

細部は怪しいところもあるエジプト。IMG_0810

ラティーノの人達に人気だったメキシコのマヤ文明のピラミッド。IMG_0813

そしてもちろん、我らがヒューストン。IMG_0816

イベントの主催者であるYusi Anさんは、地元のオンラインメディアであるHouston Pressのインタビューに対して、このイベントにかける思いを語っている。

Anさんの家族はランタン祭りが盛んな中国四川省の出身で、過去5年間のアメリカでの生活を経て、ヒューストンの多様な人口構成と、冬でも比較的温暖な気候に出会い、世界中のランドマークをテーマにして中国のランタン祭りを再現しようと決意したという。世界のランドマークを再現したイベントは他にもあるだろうが、それぞれのランドマークに対して、それぞれの国・地域の出身の人々が自分達の文化を発見して、その美しさに感動できるのは、ヒューストンならではだ。

ただ、来年以降に期待したいことがあるとすれば、主催者の出身である中国のエリア等は完璧に作りこまれているが、一部の地域については、時間的に間に合わなかったのか、予算が足りなかったのか、少々適当になっているのが残念ではある。例えば南極のエリアでは、ボーリングのピンの様なペンギンが若干不気味だ。

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しかし、全体としては大満足なイルミネーションで、今回の時点で、地元の人達の心を鷲づかみにしていることは間違いない。来年以降、更に完成度を増して、全米レベルで有名なイベントに成長することを期待したい。

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テキサス州ヒューストンで黒人の新市長が誕生

現在、アメリカでは来年の大統領選挙に向けて、移民やイスラム教徒に関する問題発言にも関わらず、共和党のドナルド・トランプ候補による「トランプ旋風」が吹き荒れている。ブッシュ元大統領一族のお膝元でもあり、長年強固な共和党の地盤であるここテキサス州について言えば、共和党内の対抗馬で同じく保守的な発言の多いテッド・クルス候補も元気がいい。

しかし、テキサス州の中でも、僕の住むヒューストンは政治的にリベラルなことで知られている。例えば、ヒューストン市民から人気を集め、3期6年にわたって市長職を務めてきたアニス・パーカー現市長は、女性市長であるだけでなく、自らがレズビアンであり、同性のパートナーと養子の子供達がいることを公言している。

そうしたリベラルな政治風土は、ヒューストンが全米第四の巨大都市であること、そして、全米でも有数の人種的に多様な都市であることと無関係ではないだろう。2010年の国勢調査に従えば人口的に、ヒューストンの多数派はラティーノ(44%)であり、アングロサクソン系の白人(26%)や、黒人(25%)よりも圧倒的に多い。

そうした中、年末でパーカー現市長が任期の限度である3期を全うするため、彼女の後継者を選ぶ市長選が行われることとなった。ヒューストン外でも大きな注目を集めた市長選だったが、11月の第一回投票では結果が出ず、12月12日の決選投票にもつれ込む。決選投票に残った二人の候補者とは、実業家で保守派のビル・キング氏と、テキサス州の民主党下院議員を長年務めてきたベテラン政治家のシルベスター・ターナー氏だ。

決選投票前には、”BACK TO BASICS”をスローガンに掲げ、財政の緊縮や交通インフラの整備を公約に掲げたビル・キング氏の立看板がヒューストンの街中に溢れ、テレビのCMでも、キング氏が頻繁に登場した。対するターナー氏はメディアへの露出は少ないものの、支援者と地道な選挙キャンペーンを続けている様だった。IMG_0781

そして、決戦当日。混戦を暗示するかの様に大荒れの天気の中、夜遅くまで結果がわからない状態が続いたが、最終的にはターナー氏が4,100票差の僅差で勝利し、ヒューストンの歴史上、二番目の黒人市長に選ばれた。

地元の新聞Houston Chronicle電子版の12月13日付けの記事Voter mobilization, black turnout drive Turner win(有権者を投票所に行く様に仕向け、黒人の投票率が高かったことがターナーの勝利につながった)では、キング氏は、白人が多数を占める選挙区では71パーセントの得票をしたのに対し、ターナー氏が黒人が多数を占める選挙区で93パーセントの得票を獲得したのに加え、ラティーノの住民が多い二つの選挙区で多数を得たことが、ターナー氏の勝利につながったことを指摘している。

そうした支持層と結びつくかの様に、ターナー氏は選挙中、貧富の差の解消や、教育の機会均等を主張することで指示を集めていた。しかし、折からの石油産業の不況でそうした社会福祉の財源は必ずしも明確ではなく、実際、12月12日付けの別のHouston Chronicleの記事Turner defeats King to become Houston’s next mayor(ターナーがキングを破りヒューストンの次の市長に当選)では、ヒューストンでは来年、1.26億ドルもの財政赤字が予想されることが述べられ、敗北はしたものの、キング氏の方が具体的な財政再建プランを持っていたことを指摘している。

多様なヒューストンの住民をまとめ上げるには、ターナー氏の人種的なバックグラウンドや、州の下院議員としての長年の経験が有利に働くこともあるだろう。年明けの就任以降、新市長がどの程度具体的な施策を打ち出せるかに注目していきたい。(写真は夕暮れのヒューストン市庁舎)IMG_0783

 

 

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