テキサス流の巨大で多様な冬のイルミネーション

日本では各都市が冬のイルミネーションの美しさを競い合うシーズンが到来した。これまでここテキサス州ヒューストンではあまり有名なイルミネーションがなかったが、この冬、ヒューストンらしい、巨大かつ多様性に富んだイルミネーションが登場し、地元の人達を興奮の渦に包んでいるので紹介してみたい。

ヒューストンの主要環状高速道路であるSam Houston Toll Wayの北側を運転していると、それは突如として登場する。IMG_0795

Magical Winter Lightsと題されたこのイベントを訪れた者は、まずその巨大さに圧倒される。普段はヒューストン競馬場として使用されている場所を使っているだけあって、広大なスペースに巨大なイルミネーションが豪快に展示されている。IMG_0796

そして次に驚かされるのが、イルミネーションのテーマの多様性だ。ヒューストンの人種的民族的な多様性を象徴するかの様に、米州、ヨーロッパ、アジア、アフリカ等のエリアに分けられた会場内では、各エリアを代表する建物を模したイルミネーションが次々と登場する。ここでいくつか紹介してみよう。

まずはロシア・モスクワの聖ワシリイ大聖堂。IMG_0802

次は、中国。IMG_0805

細部は怪しいところもあるエジプト。IMG_0810

ラティーノの人達に人気だったメキシコのマヤ文明のピラミッド。IMG_0813

そしてもちろん、我らがヒューストン。IMG_0816

イベントの主催者であるYusi Anさんは、地元のオンラインメディアであるHouston Pressのインタビューに対して、このイベントにかける思いを語っている。

Anさんの家族はランタン祭りが盛んな中国四川省の出身で、過去5年間のアメリカでの生活を経て、ヒューストンの多様な人口構成と、冬でも比較的温暖な気候に出会い、世界中のランドマークをテーマにして中国のランタン祭りを再現しようと決意したという。世界のランドマークを再現したイベントは他にもあるだろうが、それぞれのランドマークに対して、それぞれの国・地域の出身の人々が自分達の文化を発見して、その美しさに感動できるのは、ヒューストンならではだ。

ただ、来年以降に期待したいことがあるとすれば、主催者の出身である中国のエリア等は完璧に作りこまれているが、一部の地域については、時間的に間に合わなかったのか、予算が足りなかったのか、少々適当になっているのが残念ではある。例えば南極のエリアでは、ボーリングのピンの様なペンギンが若干不気味だ。

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しかし、全体としては大満足なイルミネーションで、今回の時点で、地元の人達の心を鷲づかみにしていることは間違いない。来年以降、更に完成度を増して、全米レベルで有名なイベントに成長することを期待したい。

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テキサス州ヒューストンで黒人の新市長が誕生

現在、アメリカでは来年の大統領選挙に向けて、移民やイスラム教徒に関する問題発言にも関わらず、共和党のドナルド・トランプ候補による「トランプ旋風」が吹き荒れている。ブッシュ元大統領一族のお膝元でもあり、長年強固な共和党の地盤であるここテキサス州について言えば、共和党内の対抗馬で同じく保守的な発言の多いテッド・クルス候補も元気がいい。

しかし、テキサス州の中でも、僕の住むヒューストンは政治的にリベラルなことで知られている。例えば、ヒューストン市民から人気を集め、3期6年にわたって市長職を務めてきたアニス・パーカー現市長は、女性市長であるだけでなく、自らがレズビアンであり、同性のパートナーと養子の子供達がいることを公言している。

そうしたリベラルな政治風土は、ヒューストンが全米第四の巨大都市であること、そして、全米でも有数の人種的に多様な都市であることと無関係ではないだろう。2010年の国勢調査に従えば人口的に、ヒューストンの多数派はラティーノ(44%)であり、アングロサクソン系の白人(26%)や、黒人(25%)よりも圧倒的に多い。

そうした中、年末でパーカー現市長が任期の限度である3期を全うするため、彼女の後継者を選ぶ市長選が行われることとなった。ヒューストン外でも大きな注目を集めた市長選だったが、11月の第一回投票では結果が出ず、12月12日の決選投票にもつれ込む。決選投票に残った二人の候補者とは、実業家で保守派のビル・キング氏と、テキサス州の民主党下院議員を長年務めてきたベテラン政治家のシルベスター・ターナー氏だ。

決選投票前には、”BACK TO BASICS”をスローガンに掲げ、財政の緊縮や交通インフラの整備を公約に掲げたビル・キング氏の立看板がヒューストンの街中に溢れ、テレビのCMでも、キング氏が頻繁に登場した。対するターナー氏はメディアへの露出は少ないものの、支援者と地道な選挙キャンペーンを続けている様だった。IMG_0781

そして、決戦当日。混戦を暗示するかの様に大荒れの天気の中、夜遅くまで結果がわからない状態が続いたが、最終的にはターナー氏が4,100票差の僅差で勝利し、ヒューストンの歴史上、二番目の黒人市長に選ばれた。

地元の新聞Houston Chronicle電子版の12月13日付けの記事Voter mobilization, black turnout drive Turner win(有権者を投票所に行く様に仕向け、黒人の投票率が高かったことがターナーの勝利につながった)では、キング氏は、白人が多数を占める選挙区では71パーセントの得票をしたのに対し、ターナー氏が黒人が多数を占める選挙区で93パーセントの得票を獲得したのに加え、ラティーノの住民が多い二つの選挙区で多数を得たことが、ターナー氏の勝利につながったことを指摘している。

そうした支持層と結びつくかの様に、ターナー氏は選挙中、貧富の差の解消や、教育の機会均等を主張することで指示を集めていた。しかし、折からの石油産業の不況でそうした社会福祉の財源は必ずしも明確ではなく、実際、12月12日付けの別のHouston Chronicleの記事Turner defeats King to become Houston’s next mayor(ターナーがキングを破りヒューストンの次の市長に当選)では、ヒューストンでは来年、1.26億ドルもの財政赤字が予想されることが述べられ、敗北はしたものの、キング氏の方が具体的な財政再建プランを持っていたことを指摘している。

多様なヒューストンの住民をまとめ上げるには、ターナー氏の人種的なバックグラウンドや、州の下院議員としての長年の経験が有利に働くこともあるだろう。年明けの就任以降、新市長がどの程度具体的な施策を打ち出せるかに注目していきたい。(写真は夕暮れのヒューストン市庁舎)IMG_0783

 

 

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Forbesの調査でヒューストンが全米で最も実質収入の高い都市に

読者の皆様はアメリカで収入の高い都市と聞いてどこを思い浮かべるだろうか?世界の金融の中心ニューヨークだろうか?それとも、ITベンチャーが生まれ続けるシリコンバレーだろうか?

Forbesの11月19日付けの記事(The Cities Where Your Salary Will Stretch The Furthest 2015(2015年あなたの給料を最も活用できる都市)によると、Praxis Strategy Groupという調査機関がForbesのために実施した調査で、「実質収入」の高い都市として、東海岸でも西海岸でもなく、何とアメリカ南部の我らがヒューストンが第一位に選ばれたという。

まず、ランキングを見てみると、

第一位:テキサス州ヒューストン及びその郊外

第二位:カリフォルニア州シリコンバレー

第三位:ミシガン州デトロイト及びその郊外

第四位:コネティカット州ハートフォード及びその郊外

第五位:テキサス州ダラス及びその郊外

と、テキサス新幹線で結ばれる予定のテキサス州の二大都市、ヒューストンとダラスが第五位までにランクインしている。

こうした少々驚きのランキングになるのは、この調査の独特の調査手法による。この調査では、全米の53の主要都市を調査対象にして、平均年収を、不動産価格と物価の違いを総合した生活コストで調整しているのだ。

ヒューストンの主要産業といえば、航空宇宙や医療産業もあるものの、何といっても石油産業だ。原油価格が7年ぶりの安値をつけ、当地の石油関連産業にはリストラの嵐が吹き荒れている今、ヒューストンの年収が全米で最も高くなるとは考えにくい。実際、この調査でも第一位のヒューストンの平均年収が6.0万ドルなのに対して、第二位のシリコンバレーの平均年収は9.8万ドルだ。

一方で、生活コストが安いというのは確かに実感がある。まず、年収にはマイナスに働く原油価格も生活コストにはプラスだ。公共交通機関が貧弱なヒューストンでの交通手段と言えば自家用車が基本だが、石油産業の中心ではガソリン価格も安い。近所のエクソンモービルのガソリンスタンドでは、レギュラーガソリンで、1ガロン1.75ドルをつけていた。これは、日本の単位に直せば、1リットル56円となり、日本の平均ガソリン価格の半分以下だ。IMG_0771

また、Forbesの記事でも触れられているが、更に大きいのは住宅コストの安さだ。もちろん、ヒューストンでも中心部では住宅コストは比較的高くなるが、この調査では、ウッドランズやシュガーランドなどの主な郊外地域も含んでいる。郊外では、ダウンタウンで1ベッドルームのアパートに住む様な家賃で、一戸建てに住むことができる。写真は一般的な郊外の住宅街の町並みだ。

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そして、ガソリン価格の安さは、ヒューストンの住民にとって、郊外に住むという選択肢をより現実的にさせる。実際、ヒューストンはアメリカの主要都市の中でも、最も郊外に広がった都市として知られ、郊外地域も含めたヒューストン都市圏(グレーター・ヒューストン)としては、全米第4位の人口を誇る。

結果として、生活コストを調整後の実質収入は、第二位のシリコンバレーが5.6万ドルに対して、ヒューストンは6.2万ドルで第一位となる。

しかし、テキサス新幹線についての記事でも書いたが、こうしした状況も今後は変わってくるかもしれない。安い生活コストの影響もあり増え続ける人口は、交通渋滞の深刻な悪化を生んでおり、生活の質の向上を求めて、少々高い家賃を払っても、中心部に住みたがる人々も現れてきている。そうした新しいタイプのヒューストン住民が増えてくれば、レストランやスーパー等にしても、高級路線の店舗が出てくるだろう。

Forbesはこの調査を3年おきに実施しているが、変わりゆく都市ヒューストンが次回の調査でも第一位を保っているかが注目される。

 

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「銃持込み禁止」の看板を掲げ続けるヒューストン動物園

カリフォルニア州で12月2日に発生した銃乱射事件は、全米を大きな不安で包んでいる。

アメリカ南部と言えばアメリカの中でも有数の銃社会だ。普通の人々が当たり前の様に銃を所有し、ローカルニュースを見れば毎日の様に発砲事件が起きている。しかし、ここテキサス州ヒューストンには、銃団体からの抗議にも関わらず、自らのポリシーに従って、「銃持込み禁止」の看板を掲げ続ける動物園があった。

地元の新聞であるHouston Chronicle電子版の11月25日付けの記事Houston Zoo reinstates “no gun” signs despite controversy(ヒューストン動物園は論争にも関わらず「銃持込み禁止」の看板を元に戻した)に詳細が記載されている。

事の顛末としては、まず本年9月の時点で、ヒューストン動物園が「銃持込み禁止」の看板を掲げたところ、銃保持者のための法律事務所であるTexas Law Shieldの弁護士が動物園とその関係団体に対して、看板の撤去を求める要望書を送付し、動物園は一度は看板を撤去することになる。

しかし、動物園側も再度顧問弁護士と検討を重ねた結果、その根本において、「教育的施設(Educational Institution)」である動物園にとっては、銃の持込みを禁止する看板を掲げることは禁止されていないとの判断に至り、11月下旬の時点で再掲示を実施したのだと言う。動物園側によれば、テキサスの刑法では、学校や教育的施設への銃の持込みは禁止されているという。

日本人的な感覚からすれば、子供達が色々な動物に会えて楽しめる場である動物園に銃が馴染むとは思えず、そもそも上記の様な論争があること自体に違和感がある。しかし両当事者は大真面目であり、同じHouston Chronicle記事によると、銃保持者側の顧問弁護士は動物園側の措置に憤慨しており、テキサスの法律上、「教育的施設」とは、カリキュラムや学位を授与するシステムを有する施設に限定されるとして、近く動物園側に再度抗議をする予定だという。

動物園側が論争を続けてまで守ろうとしている価値が何なのか気になり、今回動物園を訪れてみた。

動物園の入り口に着くと、その右側の壁に、例の「銃持込み禁止」の看板が大きく掲げられている。

IMG_0734そして、自分たちが「教育的施設」であるという主張を裏付けようとするかの様に、園内ではいくつもの教育的なイベントが用意されている。例えば、30分おきに園内のどこかのエリアで、飼育員たちが自らが飼育する動物について語る場が用意されている。IMG_0739IMG_0766

それぞれの動物たちの住まいも、檻に囲まれているわけではなく、広いスペースを使って、できる限り自然に近い状態が再現されている。更に、「ADOPT」といって、気に入った動物の里親になれるプログラムも用意されており、子供たちは動物園を出た後も、継続的に動物の成長に関心を持てる様になっている。

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何より僕の心をひきつけたのは、動物達を間近に見て、また、実際に触れて、無邪気に喜ぶ子供達の笑顔だ。正式なカリキュラムはなくとも、一日動物園を訪れた後では、子供達はすっかり動物に詳しくなり、また、絶滅の危機に瀕している動物への思いやりを持つ様になるだろう。確かにそんな場に、銃の存在はふさわしくない。

アメリカにおいて銃規制反対派の人々はしばしば、アメリカ合衆国憲法修正第二条に基づき、個人が武装する不可侵の権利を主張して、銃規制に反対する。しかし、頻発する銃犯罪は何らかの規制が無くしては、社会の安定が揺らぎかねないことを示唆している。少なくとも、子供達が自然環境や動物達を含めて、次の時代のあり方を学び、考える場には、銃のない平和な空間が保たれてほしいものだと思う。

 

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