日本でテキサスバーベキューが食べられる店 横浜・タップルーム

以前このブログの記事伝説のテキサス・バーベキュー Salt Lick BBQでも、オースティン近郊の伝説的なバーベキューレストラン、Salt Lick(ソルト・リック)を取り上げたが、肉をグリルするのではなく、時間をかけてスモークするテキサス・バーベキューは、テキサスを代表する料理の一つで、日本で言えばラーメンの様に多くのテキサスの人々がこだわりを持っている。

一方、日本ではバーベキューと言えば専らグリルを意味し、テキサススタイルのバーベキューにはお目にかかったことが無かったのだが、今回横浜で遂に一件のテキサスバーベキューのレストランを発見した。

横浜の古い町並みが残る地区、馬車道で、大通りから外れた路地の一角に、馬車道 タップルームは控えめに佇んでいる。IMG_0096

店の入り口には、Texas Style BBQの文字とともに、見慣れたテキサス州旗が描かれた看板がある。しかもその下には、Beef BrisketやPork Ribなど、テキサスでは定番のバーベキューのメニューが並び、それだけでも感動してしまう。IMG_0097

店内に入ると、一階がキッチンとバー、二階がメインのテーブル席、三階はルーフバルコニーとビアガーデンになっており、私達は二階のテーブル席へ。アメリカンなインテリアが並ぶ中に、日本をイメージした絵がいくつか展示され、全体として落ち着いた雰囲気だ。また、フロアの端には、テキサスの地図やナンバープレートなども展示されていて、テキサスのレストランにいるかの様な気分にさせてくれる。IMG_0099

このタップルーム、静岡県の伊豆・修善寺にブルワリーを持つベアードビールというビールメーカーが経営しているレストランとのことで、バーベキューだけでなく、ビールの種類も豊富だ。しかも、ベアードビールの創業者であるブライアン・ベアード氏はテキサス出身だという。IMG_0098

ビールの種類は非常に豊富で、エールだけでも色々あり、日本では余り見かけないIPAがあるのも嬉しい。私達は昼間だったこともあり、3種類を少しずつ飲めるサンプラーを注文。テキサスでも、ShinerやSaint Arnold、Karbachなど、大小の地ビールのブルワリーがあるためか、バーではこういったサンプラーの注文ができることが多い。IMG_0102

そして、肝心のバーベキュー。残念ながら、テキサスでも一番人気の牛肉のブリスケット(肩ばら肉)は、ディナーのみのメニューということで、ポークリブ(骨付きあばら肉)とスモークチキンのプレート(1,200円)を注文。コールスローとポテトサラダが必ずついてくるのもテキサスらしい。IMG_0105

味についてはテキサスバーベキューのスモーキーな味わいは再現できていると思う。ただ、ソルト・リックの様なテキサスの有名店と比べると肉がパサパサしている(これはテキサスのバーベキュー店でもしばしば起こることだが)のと、サーブされた時点での肉の温度が若干ぬるいのが難点。但し、日本で唯一のテキサス製Smoke Master Ovenを備え、スモークには桜の木を使うなど日本でバーベキューを作るための試行錯誤も見られ、今後も継続的に通って応援していきたいと思っている。何より牛肉のブリスケットを食べないと十分な評価はできず、少なくともディナーに再訪したい。

恐らく、日本で唯一のテキサスバーベキューのレストラン。横浜を訪れた際にはぜひ足を運んで頂きたい。

馬車道タップルーム 

住所: 〒231-0013 神奈川県横浜市 中区住吉町5−63−1
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伝説のテキサス・バーベキュー Salt Lick(ソルト・リック)BBQ

日本でバーベキューといえば、屋外に友人や家族で集まり、肉や野菜をグリルで焼いて食べることをイメージすると思う。しかし、ここテキサスで、バーベキュー、特にテキサス・バーベキューと言った場合は、意味するものは少々違う。専用のくぼみ(Pit)を用意して時間をかけていぶし、スモーキーになった肉の旨みを味わうという特別なものだ。今回は、そんなテキサス・バーベキューの伝説的なお店を紹介したい。

テキサス州の州都オースティンから南西の郊外、Driftwoodと呼ばれる小さな村の田舎道を車で走っていくと、目の前にぶどう畑と目立つ看板が見えてくる。テキサス州中、更には州外からも訪問客を集める超人気のバーベキューレストラン、Salt Lick BBQだ。IMG_1359

このレストランは、1967年にDriftwoodに住むサーマン・ロバーツ氏と彼の妻で日系人のヒサコさんが自らの牧場で始めたもの。最初は週末のみ、木曜夜に作り始めたバーベキューが売り切れるまで販売するつもりがすぐに大きな人気を博し、遂には通年営業のバーベキューレストランとして営業する様になる。現在でも、お昼前になると、店の入り口に行列ができる程の人気だ。IMG_1357

店に入ると早速、肉がいぶされたいい匂いが漂ってくる。匂いに連れられてその方向に目を向けると、そこには、バーベキューをいぶすための巨大なくぼみ(Pit)がどんと構えている。Pitの下部には、巨大な炭が豪快に並べられ、炭と炭の周囲に配された木片から巻き上がる煙が、同じく豪快に並べられた各種の肉を包んでいる。見ているだけでよだれが出てきそうな光景だ。IMG_1350

席について私達は看板メニューのサーマンズ・チョイス(16.95ドル)をオーダーする。ブリスケット(肩ばら肉)、ポークリブ(骨付きあばら肉)、ソーセージのセットでバーベキューの魅力が堪能できるセットだ。あのPitでじっくりといぶされただけあって、どの肉もスモーキーで美味しい。私は、バーベキューは何といっても、ブリスケットが主役だと考えているが、ブリスケットは下手な店で食べると、いぶされる過程で水分が抜けすぎてパサパサになっていることもある。しかし、ここのブリスケットはしっかりと水分が残り(アメリカ人はMoistと表現する)、専用のバーベキューソースをつけて食べると、とてもジューシーだ。IMG_1354

そして、Salt Lickのもう一つの魅力は、牧場でそのまま営業されていること。都市の喧騒から離れ、田舎の空気を吸いながら食べるバーベキューはそれだけで美味しい。しかもお店の横にはブドウ畑とワイナリーがあり、バーベキューと一緒に自家製のワインも楽しむことができる。IMG_1352

テキサス州を代表する料理であるテキサス・バーベキュー。その中にあって、親子二代でその味を守り続けるSalt Lickは象徴的な存在だ。オースティンまで来ることがあれば、ぜひ丘陵の中に牧場が広がるエリアに車を走らせ、伝説のバーベキューを味わって頂きたい。

そして、このレストランを紹介してくれた友人夫妻に感謝しています!ありがとう!!

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テキサスの砂漠の中にあるプラダ-Prada Marfa-

現代社会、特にファッション業界では、最新の流行は常に再生産されている。毎年、その年に流行すべきデザインが大々的な宣伝によって、大衆心理の間に浸透し、そのブランドの最新の服を身に着けることで、共有された「今」を消費することができる。一方で、そんな最新の流行も一年も経てばすぐに時代遅れになり、店頭から撤去された商品はあたかも最初から存在しなかったかの様に消え去ってしまう。

しかし、ここテキサス州西部の砂漠地帯には、2005年のコレクションを永久に陳列するプラダが存在する。永遠の「今」を生きようとする現代の人々に、抗いがたい時間の流れを見せつけようとするかの様に。

テキサス州西部のメキシコとの国境に近い辺りは、どこまで行っても背の低い植物がまばらに点在するだけの砂漠地帯が広がる。しかし、高速道路であるI-10をVan Horn(バン・ホーン)で南に曲がり、ルート90を南に40マイル程進むと、突如として道端に回りの風景と全くそぐわないものが現れる。IMG_0722
IMG_0714一見変電所かトイレか何かだと思うのだが、掲げられている看板はどうみても世界的なファッションブランドのプラダである。いかに周りと比べて違和感があるかをご理解頂くために両側の風景もご覧頂きたい。IMG_0724IMG_0725

ご覧の通り、店の両側には50年前も変わらなかったであろう砂漠の風景が広がっている。しかも、店の中に目を向けると、確かにプラダのものと思われるバックや靴がところ狭しと並べられている。IMG_0716

しかし、すぐに違和感に気づく。まず、どこにも店員の姿がない。それに陳列されている商品もどことなく一昔前の物の様に見える。

 

実はこれ、北欧出身のアート集団であるElmgreen and Dragsetがプラダの公認を得て2005年に制作した「Prada Marfa」と呼ばれる現代アートなのだ。プラダの2005年コレクションを陳列した上で、一切の修復を施さず、次第に風化していくに任せることそれ自体が、現代の物質主義への批判を込めたアートとなっている。

しかし実際には、Prada Marfaの過去10年の道のりは、「次第に風化していく」といった様な穏やかなものではなかった。完成して6日後以降、中の商品はたびたび盗難に合い、落書きの被害も何度も発生している。製作者側としては、苦肉の策として、靴は片方だけ、バックは底を切り取って展示することとなる。(上の店内の写真をもう一度見て頂きたい。)更に、2013年には、テキサス交通局から、不法な道路上の広告物とみなされてしまう。

現代の物質主義への壮大な批判を行う前に、そうした物質主義に染まった個別の人々への対処が必要だったわけであるが、関係者達はこの息の長いプロジェクトを成功させようと粘り強い努力を行っており、2014年9月にはテキサス交通局とも、Prada MarfaをMuseumと識別することで合意する。(2014年9月12日のHouston Chronicle電子版の記事)

絶え間なく最新の流行が再生産、消費され、廃棄される現代社会。50年後の未来に、21世紀初頭の「今」を思い起こさせるものがどの程度残されているだろうか。このPrada Marfaがゆるやかな風化を経て、「今」、そして「今」からの時間の経過を伝えるアートとなっていることを願いたい。

※なお、実際に訪問する場合、Prada MarfaはMarfaという名前がついてはいるが、実際のMarfaの町はそこから更に南東に40マイル程行った場所にあり、このアート作品はValentineという町に位置していることに注意して頂きたい。

 

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