銃を見せながら食事したら25%引!? テキサス州で商業施設での銃のOpen Carryが合法化

ワシントンではオバマ大統領が涙ながらに銃規制の強化を訴えている状況下、ここテキサス州では1月1日より商業施設での銃のOpen Carryが合法となり、地元のレストランやスーパーが対応に追われている。レストランで食事をしていたら後ろの客が腰に銃を下げていた、という状況に心の準備をするためにも、ここでまとめてみたい。

Texas Department of Public Safetyのウェブサイトが、1月1日から施行された法律、House Bill 910について解説している。それによると、銃を隠して携帯する免許(Concealed Handgun License(CHL)の保有者は今後、一定の例外を除いて、周りに見える形で(Openly)、銃を肩か腰に下げて携帯することが許されるという。

一定の例外の一つは、高等教育施設で、「銃持込み禁止」の看板を掲げ続けるヒューストン動物園の取り組みを以前紹介した。

また、レストランやスーパーなどの商業施設については、自身の施設内に銃のOpen Carryを認めるかは各経営者の判断に任されており、銃のOpen Carryを禁止したい経営者は、”30.07 sign”と呼ばれる看板を店の入り口に掲げなければならない。これまでのところ各経営者の判断は様々だ。

我らがヒューストンから北西の郊外に位置するサイプレスにあるバーベキューのレストラン、Brooks Placeは、法律の施行日である1月1日に、銃をOpen Carryして来店した客に対して、25%の割引を実施することを発表し、地元の各メディアの注目を集めた。地元ヒューストンの新聞Houston Chronicle電子版の1月3日付の記事Opening weekend of open carry quiet(Open Carryの最初の週末は静か)によると、新しい法律の強固な支持者であるオーナーのトレント・ブルックス氏は、その日、45人が実際に割引を獲得したことを喜び、同紙のインタビューに対して、次の様に語っている。

“I support the Second Amendment,” … “It creates a safer environment for someone dining here – if there was ever someone trying to rob us – or rob our patrons, they’d walk in here, see people with guns. That should be a deterrent.”

(私は(個人が武装する権利を規定した)アメリカ合衆国憲法修正第二条を支持する。(Open Carryは)、ここで食事をする人々に対して、より安全な環境を作りだすんだ。もし、誰かが私達や、うちの常連に対して強盗を働こうとしても、ここに入った瞬間、銃を持った人々を見ることになる。これは抑止力になるんだ。)

このレストランは、決してオバマ大統領が敵視している例の過激な銃ロビイスト団体が経営しているレストラン等ではなく、テキサス州のおいしいバーベキューのリストに入ったこともある、バーベキューの人気店である。実際、オーナーのコメントは、銃所持に肯定的なテキサスの普通の人々の感覚から、そこまで遠くはないと思う。

一方、テキサス州の港湾都市、コーパスクリスティーで誕生し、テキサス州を中心にアメリカの10の州で展開するハンバーガーチェーン、Whataburgerは、既にOpen Carryが合法となっている他の州でも、Open Carryを認めない方針で知られており、今回のテキサス州のケースでもいち早く立場を明確にした。IMG_1167

同社は法律が可決された直後の昨年7月の時点で、自社のホームページで、社長兼CEOであるプレストン・アトキンソン氏の名前で、銃のOpen Carryに関するプレスリリースを発表している。一部を引用すると、

Whataburger supports customers’ Second Amendment rights and we respect your group’s position, but we haven’t allowed the open carry of firearms in our restaurants for a long time. It’s a business decision we made a long time ago and have stood by, and I think it’s important you know why. (…) We’ve had many customers and employees tell us they’re uncomfortable being around someone with a visible firearm who is not a member of law enforcement, and as a business, we have to listen and value that feedback in the same way we value yours.

(Whataburgerは、憲法修正第二条を支持し、(銃を支持する)あなた方の団体の立場も尊重しています。しかし、私達は長い間、自分達のレストランで、銃火器のOpen Carryを認めてきませんでした。これは、私達がかなり前に実施し、守ってきたビジネス上の決断であり、私はあなた方にその理由を知ってもらうことが重要と考えています。(…中略…)私達は、警官でもないのに、目に見える形で銃火器を所持している人間が回りにいることは不安だと語る、多くの顧客や従業員を抱えています。ビジネスとして、私たちはあなた方を尊重するのと同じやり方で、こうした反応に耳を傾け、尊重しなければならないのです。)

目に見える形で銃を保持した人が近くで食事していることを安心と感じるかどうかについて、全く正反対の考え方が存在するというわけだ。日本人の感覚には、Whataburgerの考え方の方が馴染みやすい。写真は、経営者が大切にしているWhataburgerの店内の雰囲気である。IMG_1170

しかし、気になることがある。上記の写真を撮りにWhataburgerを訪問したところ、経営者の力強い言葉にも関わらず、銃のOpen Carryを禁止するのに必要な”30.07 Sign”がどこにも見当たらない。さらに、この記事を書くに当たり、いくつかのレストランやスーパーを訪問したが、どこにも”30.07 Sign”は見当たらなかった。

これは、”30.07 Sign”が持つ強すぎる効果によるのかもしれない。テキサス州の歴史ある月刊誌Texas Monthly電子版は、1月5日付のHow Open Carry Forced Businesses in Texas To Take A Side In The Cultural War(Open Carryはテキサスの商業施設に対して、文化戦争のどちらか一方の側に立つ様に強いている)と題する記事で、Open Carry支持にしても、反対にしても、立場を明確にした商業施設は、反対の立場の側から、ソーシャルメディア等を通じて反発を受けていることを指摘している。少しでも多くの集客を見込むためには、当面の間、目立つ看板を掲げず、立場をあいまいにすべきなのかもしれない。

今後、Open Carryの合法化に起因する事件が起きないことを切に願っているが、何かが起きた時、いよいよ各レストランやスーパーは決断を迫られることになるだろう。

<2016年1月12日追記>

遂に銃のOpen Carryを禁止する”30.07 Sign”を入り口に掲げているレストランを発見しました。以前テキサス州のこだわりハンバーガーとして紹介したFuddruckersです。この”30.07 Sign”が広がるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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投稿者:

Alamo

著者:Alamo アメリカ南部テキサス州に4年間在住。アメリカ南部の魅力を色々な視点から紹介できればと思っています!

8 thoughts on “銃を見せながら食事したら25%引!? テキサス州で商業施設での銃のOpen Carryが合法化”

  1. Open Carry、絵面だけ想像すると西部劇の世界のような。
    その状況が安心・抑止となるのか、不安・脅威となるのか。
    ジャパンに住む自分には不安の方が大きく感じるけど、テキサスではそれを安心ととる人がいるというのが、ある意味面白いね。

    1. 台場山さん、コメントありがとうございます!
      まさに西部劇の昔から、自らの銃で、ならず者や悪い役人から家族や自分自身の身を守ってきた歴史があるから、銃保持=安心という発想につながるわけですが、現近代において市民が武装した歴史のない日本人にはわかりづらいですよね…。価値観の違いが面白いです。

    1. 散歩さん、コメントありがとうございます!
      アメリカにおける銃の歴史は本当に奥深いです…

  2. アメリカ人が銃にこだわる一番の理由は自己防衛のためではなく、 根本的には独裁政治を防ぐためで憲法がその権利を守ってくれているのでギブアップしたら大変だと思っているから、ということを長年こちらで暮らしてやっと理解しました。 そういう視点で考えると、今のこのアメリカではテキサスが一番安全かもって思ってしまいます。 地球上で独裁政治を堂々と行っている国々では国民が武器を持っていない。 なるほど、と思いました。 政治権力者は独裁政治を防ぐためという理由を国民が知ると困ります。メディアは意図的に犯罪、治安のことしか取り上げません。 独裁政治の方向につっぱしっているアメリカで、アメリカ人に銃を持つ権利をギブアップしてほしくないと今では思うようになりました。興味深い記事を書いてくださってありがとうございました。

    1. 米在住読者さん、コメントありがとうございます!
      ご指摘の通り、合衆国憲法修正第二条に明記された「市民が武装する権利」は、アメリカの近代史における権力との戦いの中で、市民が勝ち取ったものかと思います。
      一方で、そうした武装する権利を現代社会にどう適応させていくかというのも難しい問題かと思います。

  3. Alamo様

    また来てしまいました! そうですね、難しい問題ですね。 知り合いの黒人アメリカ人は銃の携帯は憲法の視点から絶対に合法であるべきとの信念を持っていますが、でも、「ホワイトピープルがそうするのもちょっと不安」ともらしていました。 歴史を考えたらアフリカ系が危惧する気持ちもよーくわかります。頻繁に白人警官が黒人を銃殺した事件が多いこのごろですし。 テキサスの白人アメリカンは黒人が銃を携帯することはどう思っているのでしょう? 何かそんなお話を聞かれることがあったらぜひブログで紹介してくださいませ。 住んだことがないので南部のお話は興味深いです。 昨日、偶然、こちらの記事に遭遇しました。 他の記事もこれから拝読させていただきます。

    1. 米在住読者様、重ねてのコメントありがとうございます!
      ご指摘の通り、銃の問題は人種間の対立とも関係しますよね。ここテキサス州ヒューストンでは昨年8月、逆に黒人が白人の保安官を射殺するという事件が起きて、大きな騒動になりました。
      住んだことのない方にも、南部独特の社会や文化を紹介していけたらと思っております。他の記事も読んでいただけるなんて本当にありがとうございます!

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