世界最南端の謎に迫る-パタゴニア・ウシュアイア旅行記

前回のパタゴニアのフィッツロイ・トレッキング編に続き、今回も番外編としてアルゼンチンのパタゴニア旅行について書いてみたい。

フィッツロイなどの名峰やペリト・モレノ国立公園などの巨大氷河を後に、パタゴニアを更に南下すると、南米大陸の南端、そして、「世界最南端の町」として有名なウシュアイアにたどり着く。今回は、この町がどう「世界最南端」であるのか、その謎に迫ってみたい。IMG_1148

ウシュアイアは、アンデス山脈の南端のすぐ先に、ビーグル水道に面した港町が広がる、とても風光明媚な町だ。南緯55度、南極圏まで1,250Kmのこの町では、12月末頃は日が非常に長く、午後10時くらいまで明るい。下の写真は、午後9時くらいの港の風景だが、若干曇ってはいるものの、その明るさが伝わるかと思う。IMG_1145

この町は「世界最南端の町」として知られているが、町にはいろいろな世界最南端があり、訪れる者を探検家に変えていく。

まず、町の西側にはティエラ・デル・フエゴ国立公園という大きな国立公園があり、人気の観光スポットとなっているが、そこに行くには通常、「Tren del Fin del Mundo(世界の果て鉄道)」と呼ばれる蒸気機関車に乗り込む。鉄道ファンも感激と思われる、世界最南端の鉄道というわけだ。IMG_1049IMG_1050

世界の果て鉄道の終点に着くと、次に、観光バスに乗り込み、Fin del Mundo(世界の果て)と呼ばれる場所に向かう。そこはラパタイア湾を望む展望台に至る未舗装の道路の終点なのだが、それは同時に、アルゼンチンを南北に結ぶ国道3号線の終点でもある。そして更に、それは何とアメリカ最北の州アラスカから、南北アメリカ大陸を縦断して伸びている主要道路の終点でもあるのだ。看板には、「アラスカまで17,848Km」との標識があり、気が遠くなるほど南に来たのだと再認識させられる。IMG_1079

 

下の写真は世界の果てと呼ばれる場所から見える風景。世界の果てという言葉から連想するイメージと異なり、穏やかな風景が広がっている。IMG_1080

そして、世界の果てを後にし、ウシュアイア観光のハイライトであるビーグル水道クルーズに向かう。ビーグル水道は、東半分がアルゼンチン領でありウシュアイアが位置する北のフエゴ島と、チリ領である南のナバリノ島の間を通る海峡で、東の大西洋と西の大西洋を結ぶ水路でもある。ここには、岩礁や小さな島がいくつもあり、オタリアというアシカの仲間やウミウ等の海鳥達の棲み家となっている。IMG_1095

だが、ここの主役は何と言ってもペンギン達だ。人間達が「世界の果て」と呼ぶような南端の場所であっても、南極圏を主な生息地とするペンギン達にとってはむしろ北の土地であり、ペンギン達は繁殖のため、10月から3月の間のみ、パタゴニアに姿を現す。海岸を埋め尽くさんばかりのペンギン達がヨチヨチと歩く姿は非常にかわいらしい。IMG_1143

IMG_1139しかし、話はこのままでは終わらない。かわいいペンギン達に会えてすっかり満足した観光客達を乗せたクルーズ船がウシュアイアに戻る途中、船内放送をしているガイドが衝撃の言葉を口にする。

「ビーグル水道の南側に見えているのは、チリのプエルト・ウィリアムスで、人口は3,300人…」

ビーグル水道の北側にあるウシュアイアが世界最南端の町と信じていた者たちはその耳を疑わざるを得ない。

どうも、プエルト・ウィリアムスはまだ人口三千人程で、「村」というべき規模なので、ウシュアイアが世界最南端の「町(Ciudad)」であることには影響しないということらしい。しかし、聞くところによると、プエルト・ウィリアムスの人口は少しずつ増えているという。しかも、チリとアルゼンチンは、2015年7月のサッカーのアメリカ選手権決勝戦が記憶に新しい様に、何かにつけて対立しやすい。

近い将来、「世界最南端の町」の座が奪われることにならないかと余計な心配を抱いてしまう、ウシュアイアへの訪問であった。

 

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