イグアスの滝について書いた前回の記事に続き、今回も番外編としてアルゼンチンで感動した場所について書いてみたい。
アルゼンチンの最南部に位置するパタゴニアは、フィッツ・ロイやセロ・トーレに代表される、見る者を魅了せずにはいられない名峰が並び、山好きの人間にとって永遠の憧れの場所だ。地球上で日本から最も遠い場所の一つでありながら、山野井泰史氏による1990年のフィッツ・ロイ冬季単独初登など、日本人のクライマーの実績も多い。今回、アルゼンチンを旅行するにあたり、遂に僕にとっても憧れのパタゴニア一の雄峰、フィッツ・ロイをトレッキングすることができたので、その魅力を紹介してみたい。
フィッツ・ロイへのトレッキングは、麓の町、エル・チャルテンから始まる。このエル・チャルテンにしても、山道具屋や、登山者用のホステル、雰囲気のいいバーが並び、山好きにとっては天国の様な場所だ。
8時30分、フィッツ・ロイ山の登山道入り口に到着。今回は日帰りのトレッキングということで、12.5Km程先にあるフィッツ・ロイ直下の湖、ロス・トレス湖を目指す。
登山口から20分程登りが続いた後、ラス・ブエルタス川を見渡す展望台に到着。ここからは、ラス・ブエルタス川に沿って、高低差の少ないなだらかな道が続く。
フィッツ・ロイは先住民からチャルテンと呼ばれ、彼らの言葉で「煙を吐く山」という意味だ。パタゴニアの激しい気流がフィッツロイの頂に激突して煙の様な大気の凝結が起こり、その頂はほとんどの時間、その名の通り、煙の様な雲に覆われている。今回も、途中のカプリ湖を過ぎた辺りから、フィッツ・ロイの頂が見えてきたが、山頂付近は雲に覆われており、不安が募る。
しかし、登山口から二時間半程歩き、ポインセノットのキャンプ地の手前で、遂に急峻な山頂がその姿を現した。遠目から見てもその存在感は凄まじく、もっと近づいてみたいという欲求に駆られる。
11時にポインセノットのキャンプ地を過ぎ、20分程でもう一つのリオ・ブランコのキャンプ地を過ぎた後は、それまでのなだらかな道から一変し、1時間半程の急登が続く。標高は1,000m程とは言え流石に息が切れてくるが、湖で待っているはずの絶景を信じて、一歩一歩歩みを進める。
そして、12時40分、ロス・トレス湖に到着した僕は目の前の光景に立ちすくむ。
氷河から解けたばかりの水は、濃い目のシアン色をして静かに広がるロス・トレス湖をなしており、その背後にフィッツ・ロイが圧倒的な存在感でそそり立つ。その光景は、あまりに現実離れしていて、もし「天上の世界」というものが本当にあるとしたら、それはこういった場所だろうと思わせる様な、圧倒的な神々しさを感じさせる。
フィッツ・ロイはもちろん何も語らないが、氷河の衣を纏い、堂々とそびえ立つその姿は、あたかも人間のちっぽけな悩みを全て理解しているかの様に超然としている。二時間くらいそこで山を眺めて過ごした後に僕は、次はその山頂に立つために戻ってくる、との決意を心に秘め、その場を後にした。14:30頃にロス・トレス湖を出発した後、帰りは同じ道を下って、18時40分に無事に登山道に到着。
海外の山もいくつか登ったが、山としての存在感において、フィッツ・ロイは特別だと思う。パタゴニアは地球上で日本から最も遠い土地の一つではあるが、特に山好きな方は、ぜひ機会を見つけて訪れて頂きたい。
ご参考までに下記は簡単な登山記録。
フィッツロイ直下のロス・トレス湖までのトレッキング(合計10時間)
2015年12月29日
8:30 登山道出発
11:00 ポインセノットのキャンプ地着
12:40 ロス・トレス湖着
14:30 ロス・トレス湖発
16:10 ポインセノットのキャンプ地着
18:40 登山道着
日本での登山の感覚からすればありえないスケジュールに見えるが、南緯49度に位置するフィッツロイ周辺では12月末の時期は、22時くらいまで明るいことをご考慮頂きたい。また、今回僕は運が良かったが、悪天候が多い地域であり、確実にフィッツ・ロイの雄姿を拝むためには、もし都合が許せば、麓のエルチャルテンで数日宿泊することをお勧めしたい。
次は、パタゴニアの世界最南端の町、ウシュアイア編に続きます。
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