2015年11月23日付けの記事「テキサス新幹線のある未来」に続き、当ブログではテキサス在住者の視点から、テキサス新幹線プロジェクトの動向を追いかけていきたい。
11月の記事においても、テキサス新幹線が通る沿線の人々からの反対が強いことを指摘したが、いよいよその反対が強力なものになってきた。地元ヒューストンの新聞Houston Chronicleの2016年1月14日付けの記事33 Texas officials send Japanese Ambassador letter opposing high-speed train(33人のテキサスの公務員が日本の大使に高速鉄道に反対する書簡を送付)によると、11人の共和党の州議会議員を含む33人が、日本の佐々江賢一郎駐米大使宛に、テキサス新幹線プロジェクトに反対する書簡を送付した。下記に一部を引用すると、
“Through their recently formed U.S. companies, the HSR Project would unjustly take private property for the ultimate benefit of a foreign company, ” “Furthermore, the HSR Project will cut through numerous counties that will have no stops and be permanently scarred by a track dividing land and property that has been passed down through Texas families for generations, in many cases spanning multiple centuries,” “There may be other places that are better suited for and would welcome your Shinkansen technology. We encourage you to seek out a different market where this would provide an actual transportation solution and where you may encounter less opposition.”
(最近設立された米国企業を通じて、高速鉄道プロジェクトは、究極的には外国企業の利益のために、私有財産を不公正に取り上げようとしている。…更に、プロジェクトが切り裂く多くの郡では、停車駅もできず、多くの場合何世紀にもわたってテキサスの家族に世代を超えて受け継がれてきた土地と財産が線路によって分断され、永久に傷つけられる。…恐らくあなたの新幹線技術がより適し、歓迎される場所が他にあるだろう。私達は(新幹線技術)が実際の交通上の解決をもたらし、反対の少ない別のマーケットを探すことを勧める。)
と、強い口調の言葉が並べられているが、実際、テキサス新幹線は終着駅であるテキサス州の両大都市、ヒューストンとダラス以外では、テキサス州の名門大学であるテキサス農工大学(Texas A&M University)が位置するブライアン及びカレッジ・ステーションのエリアに停車するのみの予定となっており、沿線のほとんどを占める牧草地が広がる地域には、停車駅という形での恩恵をもたらさないのは事実だ。
今回、読者の皆様により沿線のイメージが伝わる様に、実際にヒューストンからダラスまで車で走ってみた。いくつか写真を貼り付けてみたい。
上の写真は何も田舎の風景ばかり選んで取り上げているわけではなく、一部の中規模の町を除いて沿線には、ひたすらこういった牧草地の風景が広がっているのである。こうした地域の住民達が、自分達とは直接の関係のないヒューストンやダラスという都市部の住民の利便性よりも、自分達が長年守ってきた土地の方を重視しても無理はない。
こうした反対にプロジェクトの推進者側はどう反応しているのだろうか?同じくHouston Chronicleの1月22日付けの記事Plans for Houston-Dallas bullet train moving along(ヒューストン-ダラス新幹線計画が進行中)では、テキサス新幹線の事業主体であるテキサス・セントラル・パートナーズのCEO、ティム・キース氏のインタビューを記載している。その中で、キースCEOはプロジェクトは予定通りに進んでいるとしながらも、こうした反対による影響についても言及している。プロジェクトは現在、地元の理解を得られる様、新幹線を地面より高く走らせる際に、土でできた梁(Beam)ではなく、コンクリート製の高架橋を採用することを検討しているそうだ。彼によると、コンクリートの高架橋はかなり高額ではあるが、より「地元に友好的な(neighborly)」方法だという。
いざプロジェクトが実行に移されれば、少なくとも線路の建設時には、こうした沿線地域での雇用を作り出すことはあるだろう。しかし、そうした初期の経済効果を超えて、どういった継続的なメリットを沿線地域の人々にもたらすかが、地元の理解を得られるポイントと言えよう。テキサス・セントラル・パートナーズは今後、いくつかの場所で説明会を開催する予定とのことで、その動向に引き続き注目していきたい。
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